リー(Yuan Tseh Lee)(読み)りー(英語表記)Yuan Tseh Lee

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

リー(Yuan Tseh Lee)
りー / リーユアンツェー
Yuan Tseh Lee
(1936― )

アメリカの化学者。中国名は李遠哲(リーユアンツェー)。当時、日本領であった台湾の新竹(しんちく/シンチュー)に生まれる。国立台湾大学を1959年に卒業、国立精華大学に進み、1961年修士号を取得した。翌1962年渡米して、カリフォルニア大学バークリー校に入り、1965年に化学博士号を取得した。ハーバード大学博士研究員を経て、1968年にシカゴ大学助教授となり、1971年準教授、1973年教授に昇格した。1974年カリフォルニア大学の教授に転じたが、同年にアメリカの市民権を獲得している。1994年台湾に戻り、アカデミア・シニカの総裁に就任した。なお1986年(昭和61)には招待研究者として来日、また日本語も堪能である。

 リーは優れた化学実験家であり、カリフォルニア大学の大学院時代から化学反応の動力学的研究に着手分子線分子ビーム)交差法に注目していた。その後ハーバード大学でD・R・ハーシュバックの研究室に参加、分子線を利用して化学反応の基本となる素過程を観測するための共同研究を開始した。リーは分子線交差装置改良に取り組み、従来の装置が一部の分子(アルカリ金属など)のみに有効であったものを、すべての分子に対し有効な装置を開発した。1986年に「化学反応の素過程の動力学的研究」に貢献したとして、ハーシュバックとともにノーベル化学賞受賞、同様の研究を行ったJ・C・ポランニーも同時に受賞した。

[編集部 2018年12月13日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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