日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマビル」の意味・わかりやすい解説
ヤマビル
やまびる / 山蛭
[学] Haemadipsa zeylanica japonica
環形動物門ヒル綱顎(あご)ビル目ヤマビル科に属する亜陸生動物。本州、四国、九州に分布し、山麓(さんろく)や谷間の湿地にすむ。体は長さ2、3センチメートルの円柱形で、背面には多くのいぼ状の突起があり、腹面は扁平(へんぺい)、黄褐色の地肌の背面に黒い3本の縦縞(たてじま)がある。各体節は1~5体環からなっている。単眼は5対で、第2、第3、第4、第5、第8体環上にある。皮膚の感覚器で、ヒトや獣類の呼気を感じ取り、シャクトリムシ状の前進運動で移動する。前方吸盤の口には3個のあごがあり、おのおのが約90個の歯をもっている。このあごで傷をつけ、ヒトや哺乳(ほにゅう)類の血を吸う。雌雄同体で、吸血したのち、交尾し、産卵する。幼生は卵嚢(らんのう)内で育つ。農薬には弱い。
この亜種は、アメリカのホイットマンが1886年にH. japonicaとして報告したものであるが、その後アメリカのモーレJ. P. Mooreが1927年にスリランカ産のヘマジプサ・ゼイラニカH. zeylanicaの1亜種としたものである。本種はH. zeylanicaより体が大きいこと、背面の3本の縦縞が明瞭(めいりょう)なことで区別される。
[今島 実]