ミリンダ王の問い(読み)ミリンダおうのとい

改訂新版 世界大百科事典 「ミリンダ王の問い」の意味・わかりやすい解説

ミリンダ王の問い (ミリンダおうのとい)

パーリ語仏典の一つ。原題を《ミリンダパンハーMilindapañhā》といい,《ミリンダ王問経》《弥蘭王問経(みらんおうもんぎよう)》などとも訳されている。途中までの漢訳として《那先比丘経(なせんびくきよう)》(訳者不明,2巻本と3巻本の2種)がある。ミリンダ王とは,前2世紀ころ西北インドを支配していたギリシア人の王メナンドロスのことで,王が仏僧ナーガセーナ那先)と仏教教理に関する問答を重ね,ついに信者になった過程を記している。(1)王とナーガセーナの前世因縁を記した部分,(2)両者が3日間の対話のすえに師弟となった経緯,(3)ミリンダ王が仏教に関する難問を発し,ナーガセーナが答える部分,(4)修行者の守るべき徳目を比喩によって述べる部分,からなる。紀元前後ごろに原型ができ,後に増広を重ねたと考えられ,必ずしも歴史的事実を伝えているとは思われないが,(2)の古層部分には,仏教の基本的問題に関して明快な議論が交わされており,ギリシアとインドの思想交流という見地からも興味深い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミリンダ王の問い」の意味・わかりやすい解説

ミリンダ王の問い
ミリンダおうのとい
Milindapañha

仏教経典の一つ。著者不明。成立年代未詳。前2世紀後半に北西インドを支配していたギリシア人の国王ミリンダ (→メナンドロス ) と,仏教の学僧ナーガセーナ (→那先 ) とが仏教教理に関する問答を行い,ついに王が出家して阿羅漢となった次第をパーリ語の対話形式で述べている。ギリシア的思惟とインド的思惟との対比交流という点で重視される。その漢訳としては『那先比丘経』2巻本と3巻本とがある。

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百科事典マイペディア 「ミリンダ王の問い」の意味・わかりやすい解説

ミリンダ王の問い【ミリンダおうのとい】

前1世紀ころ,インドで作られたパーリ語の仏教聖典。作者不明。前2世紀に北西インドを支配していたギリシア人の王ミリンダ(メナンドロス)が個人我・霊魂等の仏教教理に関して質問し,仏教僧ナーガセーナがこれに答え,ついに王が仏教に帰依(きえ)した経緯を語ったもの。漢訳は《那先比丘経(なせんびくきょう)》。

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