ミュンヒハウゼン症候群(読み)ミュンヒハウゼンショウコウグン(英語表記)Münchhausen syndrome

デジタル大辞泉 「ミュンヒハウゼン症候群」の意味・読み・例文・類語

ミュンヒハウゼン‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【ミュンヒハウゼン症候群】

Münchausen syndrome精神疾患一つ他人同情関心を引くため、病気を偽ったり実際の病気の症状を過大に訴えたり、自傷行為に及んだりする。「法螺吹き男爵の冒険」で知られるミュンヒハウゼン男爵にちなむ。害を他者になす代理ミュンヒハウゼン症候群とよばれる病態もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミュンヒハウゼン症候群」の意味・わかりやすい解説

ミュンヒハウゼン症候群
みゅんひはうぜんしょうこうぐん
Münchhausen syndrome

自分に目を向けさせるために虚偽の症状や病状を訴え、治療を求めて病院を渡り歩く精神疾患。アメリカ精神医学会のDSM(『精神障害の診断と統計の手引き』)や世界保健機関(WHO)の国際疾病分類ICD-10(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, 10th edition)では、虚偽性障害に分類されている。「病院放浪者」の別称もある。

 病名は『ミュンヒハウゼン物語』(『ほら男爵の冒険』)の主人公にちなんでいるため、詐病(さびょう)(仮病)と間違えられやすいが、実際に病人としてみられ周囲の関心や同情を引くために、下痢吐血などの身体症状を起こすまで薬物毒物服用あるいは注入する、手術痕(こん)を装うために自傷行為を繰り返す、などの点で区別できる。原因は、幼児期の虐待体験、病気や手術の体験、対人関係の問題、パーソナリティー障害などが考えられる。なお、自分の子供など近親者に同様の行為を行って病人に仕立て上げ、周囲の関心を引こうとする場合は、代理ミュンヒハウゼン症候群という。

[編集部]

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知恵蔵mini 「ミュンヒハウゼン症候群」の解説

ミュンヒハウゼン症候群

他人の愛情や関心を得、周囲をコントロールするために、虚言や詐病・自傷などを繰り返す虚偽性障害の一種。1951年、イギリスの医師により発表され、「ほら吹き男爵」の異名を持つ実在の人物ミュンヒハウゼン男爵にちなみ病名がつけられた。おもに身体症状を強く訴える。精神的利益に重きを置いているため、詐病の結果、たとえ手術となっても受け入れる。近親者が詐病などの対象となる「代理ミュンヒハウゼン症候群」もある。この場合、例えば自分の子供を虐待して関心をひこうとするため、この疾病による虐待死も発生している。

(2012-07-23)

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世界大百科事典(旧版)内のミュンヒハウゼン症候群の言及

【詐病】より

…しかし,はじめ意識的に疾患を装っていた者が,しだいに偽っているという意識を失い,症状が本人の意志から離れて自動的に出現するようになることもある。なお,虚偽の多い劇的な症状を訴えて,各地の病院を転々とする例をミュンヒハウゼン男爵(ほら吹き男爵)にちなんでミュンヒハウゼン症候群という。【臼井 宏】【野上 芳美】。…

※「ミュンヒハウゼン症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」