ビタミンB1と代謝異常(読み)びたみんびーわんとたいしゃいじょう

家庭医学館 「ビタミンB1と代謝異常」の解説

びたみんびーわんとたいしゃいじょう【ビタミンB1と代謝異常】

脚気かっけ
 細胞が基本的にエネルギーとして利用する糖質(とうしつ)はグルコースです。グルコースが酸化(燃焼)されてエネルギーを生み出すまでには、じつに多くの段階があり、それぞれに多くの酵素がはたらいて代謝を進めています。
 ところが、この過程のなかで、ビタミンB1が不足すると、酵素のはたらきが悪くなり、どうしても反応の進まないところがあります。そのため、糖質の代謝異常がおこり、血液や筋肉に、不完全燃焼の産物であるピルビン酸や乳酸(にゅうさん)がたまります。そうなると、十分なエネルギーが得られず、神経機能の調節や消化機能が衰えて、多発性神経炎(たはつせいしんけいえん)がおこります(ビタミンB1欠乏症)。
 この症状は、ふつう脚気(かっけ)と呼ばれています。診察時に膝蓋(しつがい)(膝(ひざ)がしら)の腱(けん)をたたいて反射の有無を調べるのは、神経のはたらきをみるためです。
 脚気は、全身の倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、下肢(かし)(脚(あし))の重くだるく感じられる重量感、知覚や運動のまひ(手指足先のしびれ)、動悸(どうき)や息切れなどの症状に始まり、心臓(右心室(うしんしつ))の拡大、アキレス腱(けん)と膝蓋の腱反射消失、むくみなどが現われます。発育期の子どもでは、成長の停止がおこります。
●原因
 たとえば、毎日0.3mg程度のビタミンB1しか摂取しなかったとすると、3~4か月で脚気の症状が現われてきます。
 また、ある程度摂取していても、腸内にビタミンB1を分解して効力を減少させるアノイリナーゼ菌という細菌をもつ人(アノイリナーゼ症)は、脚気になりやすいといわれています。
●検査と診断
 脚気に特有なおもな症状がそろっているかどうかが診断のポイントで、膝蓋の腱反射やむくみの有無が調べられます。また、血液中や尿中のビタミンB1濃度の測定が行なわれ、1日の尿中の量が0.1mg以下の場合は、欠乏症と診断されます。
●治療
 重症の場合は、入院して治療を受けなければなりませんが、ふつうは通院してビタミンB1の注射や薬剤の内服をすれば、かんたんに治せます。
 1日のビタミンB1の必要量(1.0~1.5mg)程度を毎日の食事から補給することでも治りますが、ビタミンB1剤を使用して、より多量に摂取するほうがすみやかに治ります。
 アノイリナーゼ症の人には、活性型ビタミンB1(アノイリナーゼ菌で分解されず、吸収されやすく、血中に長く保持されるタイプ)を使用します。
 根本的には、薬剤を使いアノイリナーゼ菌を退治することが必要です。
●予防
 日常、1日あたりの必要量を下回らないように、ビタミンB1を多く含む食品をとることがたいせつです。
 偏食しないこと。とくに、白米飯などの糖質性食品を多く食べる人は、ビタミンB1の必要量も多くなります。
 ビタミンB1を多く含んでいる食品としては、豚肉、胚芽米(はいがまい)、きなこ、落花生、ゴマ、ウナギ、たらこなどがあります。ビタミンB1を添加している強化米(きょうかまい)や強化精麦(きょうかせいばく)を利用するのも1つの方法です。

出典 小学館家庭医学館について 情報