ヒシモドキ(英語表記)Trapella sinensis Oliv.

改訂新版 世界大百科事典 「ヒシモドキ」の意味・わかりやすい解説

ヒシモドキ
Trapella sinensis Oliv.

ゴマ科の水生多年草。茎は水中を長く伸び,節から根を出す。葉は対生し,水中葉は披針形から線形水面に浮かぶ葉は葉柄があり,葉身は腎臓状広卵形で,長さ2~3cm。縁には波状のにぶい鋸歯がある。夏季に葉腋ようえき)から花梗を出し,水面に淡紅色の花をひらく。萼と花筒は半ば合着し,子房は半下位となる。花冠は先で5裂して,やや唇形となり,直径2cmほど。また,しばしば閉鎖花をつける。果実は細長く,内に1個の種子を有している。宿存する萼片とげ状に伸び,ヒシのとげのように見えるのでヒシモドキの名がある。東アジアの暖帯から温帯に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒシモドキ」の意味・わかりやすい解説

ヒシモドキ
ひしもどき / 菱擬
[学] Trapella sinensis Oliv.

ヒシモドキ科(APG分類:オオバコ科)の多年生水草。水中葉は細い披針(ひしん)形、水上葉は三角状円形または腎臓(じんぞう)状円形。7~9月、葉腋(ようえき)から花柄を水面上に出し、淡紅色の両性花を開く。水中には多くの閉鎖花をつける。花冠は筒形で左右相称、上方は膨らみ、先は5裂し、やや唇形となる。雄しべは4本、2本は仮雄蕊(かゆうずい)となる。子房は中位で2室、1室のみが成熟し、胚珠(はいしゅ)が2個垂れ下がる。果実は円柱形の閉果で、3~5本の刺(とげ)のある萼筒(がくとう)に包まれ、1個の種子がある。丘陵の池沼に生え、本州から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。名は、葉や果実がヒシ(ヒシ科)に似ることによる。

 ヒシモドキ科Trapellaceaeはヒシモドキのみからなり、1属1種である。

[高橋秀男 2021年8月20日]

 APG分類ではオオバコ科に含められ、ヒシモドキ科は消滅した。

[編集部 2021年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒシモドキ」の意味・わかりやすい解説

ヒシモドキ
Trapella sinensis

ゴマ科の多年生の水草で,ムシヅルともいう。アジア東部の暖温帯に広い分布をもつ。本州,四国,九州の沼や池に生え,茎は細く伸びる。葉は対生し,水中葉は細長く,水上葉は丸い心臓形である。花は7~9月に,葉腋に単生する。花には長い柄があり,淡紅色で水面上に上向きに咲く。通常の花のほかに閉鎖花をつけることも多い。果実は細長く円柱形で,上部に5個のとげ状の突起があり,種子は4稜があって細長い。

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