ニシキギ(英語表記)winged spindle-tree
Euonymus alatus (Thunb.) Sieb.

改訂新版 世界大百科事典 「ニシキギ」の意味・わかりやすい解説

ニシキギ
winged spindle-tree
Euonymus alatus (Thunb.) Sieb.

山に自生し,また庭にもよく植えられるニシキギ科の落葉低木。秋に美しく紅葉するところから,和名がついた。高さ2~3mくらいになる落葉性の低木。枝にはコルク質の翼が4条発達し,おもしろいので庭に植えられたり,生け花の材料としてもよく用いられる。葉は対生し,両端がとがった長楕円状の倒披針形で長さ2~7cm,毛がなく,秋になると美しく紅葉して落ちる。花は小さく,5~6月ころに開き,淡緑色で直径約5mm。4枚の花弁と4本のおしべがあり,中央にある平らな花盤の真ん中から,めしべの柱頭がのぞいている。果実は1~2個の心皮だけが発達して熟すと縦に割れ,中から橙赤色の仮種皮に包まれた種子が現れてぶら下がり,美しい。昔はこの実をすりつぶして,アタマジラミを退治するのに用いたという。日本全土,サハリン,中国に分布する。

 枝にコルク質の翼が発達しないものをコマユミform.ciliato-dentatus (Fr.et Sav.)Hiyamaとして区別する。山に野生しているのはこれが普通である。

 ニシキギ属Euonymus(英名spindle-tree)はよく似た種類が多く,日本にも20種近くが野生している。マユミE.sieboldianus Bl.は高さ数mになる落葉小高木で,山に野生し,葉は長楕円形で長さ5~15cm。秋になると黄色になるが,果実は赤くて美しい。昔はこの材で弓を作ったところから,真弓(まゆみ)という名がついた。日本全土,朝鮮,サハリンに分布する。ツリバナE.oxyphyllus Miq.はマユミに似た大型低木で,葉はやや卵形になって幅が広い。花がニシキギやマユミでは4数性であるのに比し,ツリバナは5数性である。日本と中国に分布し,山地に普通に見られる。

 ニシキギ科Celastraceaeは世界に約60属850種がある。すべて木本で,まれにつるとなるものもあり,葉は互生または対生。花は4または5数性からなり,花盤が発達する。
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ニシキギの枝に羽がついているのが矛の刃や矢羽を思わせるため,古代中国では衛矛と呼ばれた。古和名では〈おにのやがら〉ともいい,鬼を殺したり,呪咀によって取り憑(つ)いた虫も除くとされていた。また室町時代の《壒囊抄(あいのうしよう)》には,陸奥(むつ)国の風として,恋文を書くかわりに,枝を1尺ほど切っておもう女の家の門に立てたとある。女は承知のしるしにそれを家に取り入れ,取り入れぬ場合は拒絶を意味した。だが,それでも男が立て続け,千束に達すると恋が成就する場合もあった。また枝についた羽状のコルク質の部分を古代から薬用にしている。適応症は子宮からの大量下血や血の道の病気,乳汁の不足や皮膚病で,解毒にも用いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニシキギ」の意味・わかりやすい解説

ニシキギ
にしきぎ / 錦木
[学] Euonymus alatus (Thunb.) Sieb.

ニシキギ科(APG分類:ニシキギ科)の落葉低木。高さ3メートルに達する。枝は緑色、のちにコルク質の4翼が出るのが特徴である。葉は対生し、楕円(だえん)から倒卵形で長さ2~7センチメートル、質は薄い。5~6月、葉腋(ようえき)から長い柄のある集散花序を出し、4数性の淡緑色花を数個下向きに開く。ほかのニシキギ類と異なり、果実は1、2個の離生した心皮からなる。山地や丘陵に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国、千島、樺太(からふと)(サハリン)に分布する。変異が多くいくつかの品種が知られ、枝に翼がないものをコマユミ、翼がなく葉が小さいものをコバノコマユミ、同じく葉が大きいものをオオコマユミという。庭木としてよく栽培される。種子に精油成分が含まれ、工業油としたりする。九州南部から沖縄には、本種に似た常緑性の別種リュウキュウマユミE. lutchuensis T. Itoがある。

 ニシキギ属は北半球の温帯、暖帯を中心に150種あり、日本にはニシキギのほかにマユミ、マサキなど18種分布する。

[門田裕一 2020年2月17日]


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百科事典マイペディア 「ニシキギ」の意味・わかりやすい解説

ニシキギ

ニシキギ科の落葉低木。北海道〜九州,北東アジアの山野に自生。枝には硬いコルク質の翼が4条ある。葉は対生し,楕円形で縁に鋸歯(きょし)があり,秋に美しく紅葉。5〜6月,葉腋に径約7mmの淡緑色4弁花を数個開く。果実は10〜11月,褐色に熟して裂開し,なかから黄赤色の仮種皮をかぶった種子を出す。庭木とする。枝に翼のないものをコマユミといい,山野ではこちらの方をよく見かける。

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