ドアーブ(英語表記)Doāb

改訂新版 世界大百科事典 「ドアーブ」の意味・わかりやすい解説

ドアーブ
Doāb

インド北部,ウッタル・プラデーシュ州の西部,ガンガー(ガンジス)川とヤムナー(ジャムナー)川の二大河川に挟まれた河間平野をいう。インド亜大陸で〈ドdo〉はウルドゥー語ヒンディー語の〈2〉を,また,〈アーブāb〉は〈水〉を意味し,一般的に2本の河川に挟まれた河間地域の地名として,二つの河川名をつけて呼ぶことが多い。ドアーブ地方は,正しくはガンガー・ヤムナー・ドアーブと呼ばれ,きわめて低平で肥沃沖積平野である。その規模は,北のデーラー・ドゥーンから東のアラーハーバードまで約750km,最大幅100kmに及び,面積は5万5000km2もある。ここに生活する住民は,12県で約2700万人に上り,人口密度も491人/km2(1981)ときわめて稠密である。古くから灌漑施設が発達し,小麦,サトウキビ,米,豆類の栽培が盛んで,パンジャーブ地方と並ぶインドの代表的農業地域である。農業の発達に支えられ,都市の成長も著しく,メーラトアリーガルカーンプル,アラーハーバードといった重要な商工業都市を含んでいる。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ドアーブ」の解説

ドアーブ
Doāb

「二本の川」の意だが,そこから転じて二河川に挟まれた河間地帯をさす。特にインド北部のガンジス川ヤムナー川の間に挟まれた平野をさすのが一般的で,デリー北方からアラーハーバードまでを含む。土壌が肥沃で灌漑が発達し,古くから農業が栄え,商工業が発達した。数々の王朝興亡を繰り返す舞台となり,19世紀初頭にはイギリス領に編入された。インド独立後はウッタル・プラデーシュ州の一部となる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドアーブ」の意味・わかりやすい解説

ドアーブ
Doāb

ウルドゥー語,ヒンディー語で「2つの川」を意味し,インドでは一般にガンジス川とその支流ジャムナ川とにはさまれた地域をさす。ムザファルナガル,メールート,アリーガルなどの都市が立地し,周縁部には,カーンプル,アラーハーバード,デリー,アーグラなど,歴史,政治上に重要な大都市が多い。ガンジス川とその支流ガーガラ川にはさまれた地域もグレートドアーブと呼ばれることがある。パキスタンでも,2本の川の間の地域をさし,バリ=ドアブ,レクナ=ドアブ,シンドサーガル=ドアブなどの地名として用いられている。

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世界大百科事典(旧版)内のドアーブの言及

【バラモン】より

… アーリヤ人が部族を単位とする生活を送っていた前期ベーダ時代に,すでに司祭職は世襲される傾向がみられた。アーリヤ人がガンガー(ガンジス)上流域(ドアーブDoāb)に進出し農耕社会を完成させた後期ベーダ時代に,祭式の重要性はいっそう高まったが,この時代に司祭階級は祭式を複雑に発達させてこれを独占し,〈人間の姿をした神〉とまで主張するにいたった。そして内婚規制を強めて排他的集団を形成し,4バルナの第1の地位を獲得した。…

【バラモン】より

… アーリヤ人が部族を単位とする生活を送っていた前期ベーダ時代に,すでに司祭職は世襲される傾向がみられた。アーリヤ人がガンガー(ガンジス)上流域(ドアーブDoāb)に進出し農耕社会を完成させた後期ベーダ時代に,祭式の重要性はいっそう高まったが,この時代に司祭階級は祭式を複雑に発達させてこれを独占し,〈人間の姿をした神〉とまで主張するにいたった。そして内婚規制を強めて排他的集団を形成し,4バルナの第1の地位を獲得した。…

【パンジャーブ】より

…この最低所に向けて諸河川が流下するため,水系網はここをかなめとする扇形を描く。水系網の河間の地がドアーブdoāb(〈二つの川〉の意)で,多くは両側を流れる河川名にちなむ名をもつ。ドアーブは河流沿いのベートbethと呼ばれる狭長な新しい沖積低地と,その背後の比高6~10mの崖によって画されるバルbarと呼ばれる古い沖積台地からなる。…

※「ドアーブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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