ジチゾン(読み)じちぞん(英語表記)dithizon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジチゾン」の意味・わかりやすい解説

ジチゾン
じちぞん
dithizon

有機試薬の代表的なものの一つ。正しくはジフェニルチオカルバゾンという。黒紫色の結晶性粉末。水やエタノールエチルアルコール)にはほとんど溶けないが、四塩化炭素クロロホルムなどにはよく溶ける。ケト形の構造式を示す。カドミウム、銀、水銀、銅、亜鉛、鉛などの重金属イオンと反応して、水に溶けにくいキレート錯体の着色沈殿黄褐色赤色、紫色など)をつくるので、重金属イオンの検出分離に用いられる。また沈殿はクロロホルムに溶けるので、比色定量に利用することができる。この種の試薬のうち、もっともよく研究されている。

[務台 潔]


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改訂新版 世界大百科事典 「ジチゾン」の意味・わかりやすい解説

ジチゾン
dithizone

コバルト,銅,鉛,水銀など数種の重金属の高感度分析試薬。とくに鉛の微量定量分析に使用される。化学名はジフェニルチオカルバゾンである。168℃で分解青黒色の単斜晶系結晶で,分子は結晶中でも溶液中でもほぼ平面構造をとり,多重結合性は分子全体に分布している。

 水に不溶,アルコールにはわずかに溶け,クロロホルム,四塩化炭素には容易に溶ける。溶液は一般に不安定であるが,表面を亜硫酸水で覆っておけば保存可能である。高温に加熱すると分解し,きわめて有毒な蒸気を発生する。動物実験の結果では,糖尿,視覚損傷の原因になるといわれている。試薬の廃棄法は,有機溶媒に溶かし燃焼分解するのが良い。
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化学辞典 第2版 「ジチゾン」の解説

ジチゾン
ジチゾン
dithizone

C13H12N4S(256.33).ジフェニルチオカルバゾンともいう.フェニルヒドラジン二硫化炭素から得られる.青黒色の結晶性粉末.融点167 ℃(分解).水に不溶,四塩化炭素,クロロホルムに可溶.ケト形とエノール形の互変異性体が存在し,金属キレート錯体も両者が存在するが,一般にケト形が安定で,有機溶媒に易溶.多数の金属イオンと反応し,特有のキレート錯塩をつくるので,微量の金属の分離,定性,定量に用いられる.[CAS 60-10-6]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジチゾン」の意味・わかりやすい解説

ジチゾン
dithizone

ジフェニルチオカルバゾン C6H5-N=N-CS-NH-NH-C6H5 の別称。青黒色結晶性粉末。ビスマス,カドミウム,銅,鉛,亜鉛,水銀などの抽出比色試薬でクロロホルム溶液として用いることが多い。

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