サンチェス・フェルロシオ(英語表記)Sánchez Ferlosio, Rafael

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

サンチェス・フェルロシオ
Sánchez Ferlosio, Rafael

[生]1927.12.4. イタリア,ローマ
[没]2019.4.1. スペイン,マドリード
スペインの小説家。父は作家でジャーナリストラファエル・サンチェス・マッサス。父が新聞社の特派員として勤務していたイタリアのローマで生まれ,幼少期からスペイン内乱時代にいたるまでをそこで過ごした。マドリード・コンプルテンセ大学で哲学・文学の博士号を取得。大学ではイグナシオ・アルデコア,ヘスス・フェルナンデス・サントスカルメン・マルティン・ガイテなど,同時代の作家たちと交流を深めた。1951年,空想的な悪者小説『アルファンウイ』Industrias y andanzas de Alfanhuíで小説家としてデビューを果たす。2作目の『ハラマ川』El Jarama(1955)は,若い戦後世代の生態を客観的に描いてナダル賞,スペイン批評家賞を受賞し,戦後のスペイン文学を代表する作品の一つとなった。ほかの作品に『ヤルフォスの証言』El testimonio de Yarfoz(1986)など。小説以外にも,新聞や雑誌に定期的に論説随筆寄稿し続けた。1994年スペインエッセー賞,2004年セルバンテス賞など受賞多数。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

サンチェス・フェルロシオ
さんちぇすふぇるろしお
Rafael Sánchez Ferlosio
(1927― )

スペインの小説家。空想と現実のミックスしたメルヘン的世界を描く『アルファンウィの才知と冒険』(1951)で文壇に登場。第二作『ハラマ川』(1956)で、スペインの作家の登竜門ナダル文学賞を獲得し注目された。この作品は、マドリード郊外のハラマ川にグループで泳ぎにきた若者たちのとりとめもない会話や動きを、徹底した写実的手法で描写し、当時のスペイン社会のあり方を強く批判したもので、第二次世界大戦後のスペイン社会派小説の代表作と目されている。その後は、小説技法についての考察を行った『庭園での数週間』(1974)や、短編『熱い心』(1961)、小説『ヤルフスの証言』(1987)、随筆集『魂と羞恥(しゅうち)心』(2000)などを発表するほか、新聞、雑誌への寄稿を通して、短編、随筆、評論など幅広い文筆活動を展開している。

[東谷穎人]

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