サトイモ(里芋)(読み)サトイモ(英語表記)Colocasia antiquorum var. esculenta

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サトイモ(里芋)」の意味・わかりやすい解説

サトイモ(里芋)
サトイモ
Colocasia antiquorum var. esculenta

サトイモ科多年草で,熱帯アジア原産。熱帯から温帯地方にかけて広く栽培される重要な作物。地下の太く短い根茎から多数の葉を出し,葉柄は太く多孔質で軟らかく,基部は互いに重なり合っている。葉身は心臓形をした卵形で表面にろう質を分泌して水をはじく。 10月頃,まれに黄緑色仏炎包に包まれた肉穂花序をつける。生育するに従って親芋の側方に多数の子芋を生じる。芋はデンプン炭水化物を含む。栽培品種は非常に多く,熱帯アジアでタロイモ taroと呼ばれている一群もこのサトイモの品種群である。

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百科事典マイペディア 「サトイモ(里芋)」の意味・わかりやすい解説

サトイモ(里芋)【サトイモ】

熱帯アジア原産のサトイモ科の作物。80〜120cmの葉柄のある大きな葉を多数群生する。いもは球茎で,多くの節を有し,盛んに肥大して新球茎,すなわち子いも,孫いもを生ずる。品種は多く,約200。子いも用品種(えぐ芋など),親いも子いも兼用品種(八頭(やつがしら)),親いも用品種,葉柄用品種に大別される。いもは煮て食し,葉柄はずいきとして食用とする。→タロイモ
→関連項目赤芽芋いも(芋/藷/薯)海老芋

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世界大百科事典 第2版 「サトイモ(里芋)」の意味・わかりやすい解説

サトイモ【サトイモ(里芋) taro】

食用とするサトイモ科の多年草(イラスト)。インド東部からインドシナ半島部にかけての地域が原産地であり,古く稲作の渡来以前に日本でも栽培されていたと考える人もある。茎は地中にあってほとんど伸びず,肥大して塊茎(いも)(イラスト)となる。葉は長さ1~1.5mの葉柄(ずいき)を直立し,葉身は楯形,卵円あるいは心臓形で,長さ30~50cm,幅25~30cm。表面が滑らかで水をはじく。地上に抽出した長い花茎の先に肉穂花序をつけ,仏焰苞(ぶつえんほう)に覆われる。

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世界大百科事典内のサトイモ(里芋)の言及

【ヤウテア】より

…子いもの長さは15~25cm。サトイモに似ているので両者を区別せずにココヤムcocoyamと呼ぶこともある。現在,原産地域をはじめ,アフリカ,東南アジアや太平洋の島々で広く栽培されている。…

【いも(芋∥薯∥藷)】より

…サトイモ科の植物には地下あるいは地上性の茎を食用に利用している種が多く,日本での代表的なものはサトイモとコンニャクである。それらのうちサトイモ(taro∥old cocoyam)は東南アジア大陸部の原産で,現在はオセアニアや東アジアで広く栽培されている。ヤウテア(yautia∥new cocoyam)は中南米原産で,サトイモより乾燥に強く,現在では旧世界熱帯でサトイモ以上に広く栽培されている。…

【タロイモ】より

…太平洋のポリネシア地域では,主食として栽培しているサトイモや,それに類似のサトイモ科植物をタロと一般的に呼んでいる。それからサトイモ類を英語でtaroと呼ぶようになり,さらにその呼び方が日本にもち込まれ,〈タロイモ〉という総称名が,南方系の栽培サトイモ類に使用されるようになった。この太平洋諸島のタロは,作物としては日本でも栽培されているサトイモをもともとは指すものであるが,南アメリカから新しくもち込まれたヤウテアも,サトイモに似ているため,現地でもタロと呼ばれることが多い。…

【いも(芋∥薯∥藷)】より

…作物として栽培されているものでも,キャッサバの苦味品種群のように青酸配糖体を含有していて有毒で,食用に供するためには毒抜きを必要とするものがある。しかし,植物の地下貯蔵器官は収穫が簡単で,種子に比較すると採集しやすいため,現在でも熱帯圏でのヤマノイモ類,キャッサバ,サトイモ類や温帯のジャガイモのように,いも類は主食として多く利用されている。 日本では弥生時代以前の縄文時代に,すでにいも類をともなった雑穀農耕が行われていたと考えられている。…

【十五夜】より

…なお,十五夜の行事に本土では供物を盗むことがなかば公認されていること,南九州から南島にかけては綱引きと八月踊あるいは十五夜遊びといった諸要素が結びついている。 十五夜はまた〈芋名月〉と呼ばれるように,サトイモその他のいも類を供える儀礼が顕著である。したがって元来タロイモ系統のいもの収穫儀礼であった十五夜祭儀が,水稲栽培の発達に伴って,第2次的にイネの収穫儀礼と結びつくようになったと考えてよさそうである。…

【雑煮】より

…後者は関東に多く,切餅を焼いて用いる。餅に配する具は一定しないが,《諸国風俗問状答》に〈雑煮餅の事,菘,芋,大根,人参,田作など通例〉という屋代弘賢の質問が見られるように,江戸後期には青菜,サトイモ,ダイコン,ニンジン,ごまめなどが一般的なものであった。現在ではそのほかに豆腐,かまぼこ,エビ,鶏肉などがよく使われ,ブリやサケを用いる地方もある。…

【タロイモ】より

…太平洋のポリネシア地域では,主食として栽培しているサトイモや,それに類似のサトイモ科植物をタロと一般的に呼んでいる。それからサトイモ類を英語でtaroと呼ぶようになり,さらにその呼び方が日本にもち込まれ,〈タロイモ〉という総称名が,南方系の栽培サトイモ類に使用されるようになった。…

【中秋節】より

…陰暦8月15日は秋の半ば(中秋)にあたり,中国では月を祭る日とされてきた。古くから観月の習慣はあるが,中秋のそれに固定化したのは唐代以後であり,中秋の名月こそ一年中で最も美しい月とされた。初めは高楼等に登って月を眺めながら酒食を楽しむにすぎなかったが,元・明時代,月を祭るようになったらしい。清代では,元旦・端午とともに三大節として重視され,商業取引の決済期でもあった。庭先に設けられた祭壇上には,太陰星君(月の神)やウサギなどを描いた紙製の月光馬児が立ち,その前に月餅(げつぺい)や果物,枝豆,鶏頭の花などを供えて月を祭った。…

【月見】より

…供物は異なるが,こうした中秋の名月観賞の風は,すでに中国唐代の記録に記されているから,それが朝鮮,日本に伝わって上流階級の間に行われ,しだいに民間にも及んだものと考えられる。ところが,日本の基層文化における中秋名月は,稲とサトイモの祭儀と結びついている点が注目される。そして稲作よりも畑作に関する儀礼の比重が,はるかに大きいことがしだいに判明してきている。…

【有毒植物】より

…イラクサは折れて皮膚内に残った刺毛からアセチルコリンやヒスタミンが放出されるため,はれやかゆみをひきおこす。ヤマノイモ,サトイモ,カラスビシャク,マムシグサなどの根茎にはシュウ酸カルシウムの鋭くとがった針状結晶が存在し,皮膚を刺激し炎症をおこす。コンニャク,キーウィフルーツでも同じ現象がみられるが,原因をシュウ酸カルシウムだけとする説には疑問がある。…

※「サトイモ(里芋)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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