グロビュール(読み)ぐろびゅーる(英語表記)globule

翻訳|globule

デジタル大辞泉 「グロビュール」の意味・読み・例文・類語

グロビュール(globule)

周囲に比べて星間塵密度が高い分子雲。低温の分子状の水素ヘリウム一酸化炭素などからなる。直径1000分の1光年から数光年で、多くの場合、質量太陽と同程度。不透明な小型の暗黒星雲として観測され、しばしば活発な星形成領域を伴う。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グロビュール」の意味・わかりやすい解説

グロビュール
ぐろびゅーる
globule

暗黒星雲の一種。星と星の間の空間はまったくの真空ではなく、物質はプラズマ原子、分子、星間塵(じん)という形で存在している。これらを総称して星間物質という。星間塵は密度の高い領域に存在し星の光を吸収してしまうので、天空の写真をとると星がないように見える。このような領域を暗黒星雲といい、その大きさは、直径1000分の1光年のものから10光年以上のものにまでわたっている。そのうち、形が球状で、大きさが直径数光年以下のものをグロビュールとよぶ。太陽から1000光年内で、およそ10個程度の大きい暗黒星雲と、100個程度の直径1光年前後のグロビュール、そして多数のより小さいグロビュールが発見されている。これらはおもに星が誕生しつつある明るい星雲のかたわらや前面でみつけられている。暗黒星雲やグロビュールはゆっくりつぶれて原始星になり、やがてその星からの光で星間塵は蒸発してしまい、星が見えるようになる。大きい暗黒星雲からは質量の大きい星が多数生まれ、グロビュールからは太陽程度の質量の小さい星が単独に生まれると考えられている。グロビュールはいわば星の卵である。

池内 了]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「グロビュール」の意味・わかりやすい解説

グロビュール
globule

グロビュールは星の胞子と呼ばれたりするが,明るい星野や散光星雲を背景に黒く浮かび上がる暗黒星雲の一種である。暗黒星雲には大きさも形もさまざまのものがあるが,グロビュールは比較的小さく,また,円形に近いもので,低温の宇宙塵が集合して遠方恒星や散光星雲の光を遮っている場所である。遮光の度合や低温度宇宙塵の放射する赤外線などで調べると,その大きさは0.3~3光年,質量は太陽質量の0.2~60倍程度である。また,宇宙塵はきわめて低温で10~30Kという状態にある。グロビュールは一般に星間空間で星が誕生する前の,これから重力収縮が始まろうとする段階天体と考えられ,そこから星の胞子という名前もつけられたが,最近の研究では,小型のグロビュールは自分の重力作用で収縮を起こすのは困難であることがわかり,そのまま星の誕生に結びつくといえなくなった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「グロビュール」の意味・わかりやすい解説

グロビュール

暗黒星雲の一種。低温の宇宙塵が集まって恒星や散光星雲の光を遮っている部分で,形は円形に近く,比較的小さいものをいう。星が誕生する前の,重力収縮が始まろうとしている段階にあるものと考えられ,〈星の胞子〉の名で呼ばれることもある。グロビュールの中にはメチルアルコールなどの有機分子の存在が確認されているものもある。
→関連項目星間物質

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のグロビュールの言及

【星間物質】より


[星間物質と星の誕生]
 バラ星雲などの写真を見ると,星雲の中に黒い丸い粒々が連なっている。これは星間物質が濃く集まったところでグロビュールglobuleと呼ばれる。やがて星として光り出すと思われる。…

【星雲】より

…それらが,銀河系の渦状腕に集まって巨大分子雲になる。暗黒星雲の特殊なものとして,大きさはふつうの1/100くらいで,密度は1000倍という丸いグロビュールがある。ばら星雲の中に多数見られるもので,恒星の胞子と呼ばれている。…

【星間物質】より


[星間物質と星の誕生]
 バラ星雲などの写真を見ると,星雲の中に黒い丸い粒々が連なっている。これは星間物質が濃く集まったところでグロビュールglobuleと呼ばれる。やがて星として光り出すと思われる。…

※「グロビュール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」