カンゾウ(甘草)(読み)かんぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンゾウ(甘草)」の意味・わかりやすい解説

カンゾウ(甘草)
かんぞう / 甘草

マメ科(APG分類:マメ科)の多年草。一般にはウラルカンゾウGlycyrrhiza uralensis Fisch.をさす。茎は直立し高さ30~80センチメートル、根茎は円柱状で地下に走出枝を多数伸ばし、主根は長く、表面は赤褐色ないし暗褐色、内部は淡黄色で甘い。葉は奇数羽状複葉で長さは8~24センチメートル、小葉は5~17枚で倒卵形ないし楕円(だえん)形、両面に腺毛(せんもう)と白毛がある。葉腋(ようえき)に葉より短い穂状花序をつけ、淡紫色の花を多数つける。雄しべは10本で二体雄蕊(ずい)をなし、雌しべは1本。果実は豆果(とうか)で裂開せず、鎌(かま)状に強く曲がり、黄褐色の刺状腺毛を密生する。中国の黄河以北および西部、モンゴルシベリア日当りのよい乾燥した草原や河岸の砂質土壌に生える。ウラルカンゾウによく似たスペインカンゾウG. glabra L.は地中海地域から中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区まで分布し、花は淡紫色であるが、旗弁が白色ないし黄白色で、豆果(とうか)は長円形またはやや湾曲し、表面は褐色で光沢があり、小葉は楕円形ないし狭長卵形である。スペイン、フランス南部、イタリア北部、バルカンカフカスに野生するものは全株無毛であるが、ハンガリーウクライナ、中央アジア、シベリア南部、新疆に野生するものは全株に腺毛があるので、これをG. glabra L. var. glandulifera Regel et Herderとして区別する。これらの根と走出枝を乾燥したものを甘草と称し薬用にする。

[長沢元夫 2019年10月18日]

薬用

紀元前から中国、エジプトギリシアで呼吸器カタルや腹痛などに用いた。漢方ではもっとも多く使用される薬物で、疼痛(とうつう)、痙攣(けいれん)、潰瘍(かいよう)を治す作用があるので、腹痛、咽喉(いんこう)痛、咳(せき)、胃潰瘍などに用いるほか、サポニンのグリシリジンの構成部分であるグルクロン酸は、肝臓で有毒物質を抱合してそれを体外に排出させるので解毒剤としても用いる。ビール、たばこ、しょうゆの製造の際、甘味料として加える。日本には生育しないので、生薬(しょうやく)の形だけでなく、水で抽出して製した甘草エキスも多量に輸入している。

[長沢元夫 2019年10月18日]

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百科事典マイペディア 「カンゾウ(甘草)」の意味・わかりやすい解説

カンゾウ(甘草)【カンゾウ】

シベリア南部〜中国西部に自生するマメ科の多年草。高さ50〜100cm,奇数羽状複葉で小葉は4〜8対。花は淡紫色。本種およびスペインカンゾウ,ロシアカンゾウ,ペルシアカンゾウなどの根を乾燥したものを甘草といい,去痰(きょたん)剤,丸薬基剤などとするほか,胃・十二指腸潰瘍(かいよう)にも用いられる。漢方では,鎮痙(ちんけい)・解毒の目的で広く用いられ,甘草湯,葛根(かっこん)湯などに処方される。甘味料としても重要。
→関連項目五香粉

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カンゾウ(甘草)」の意味・わかりやすい解説

カンゾウ(甘草)
カンゾウ
Glycyrrhiza glabra; licorice root

マメ科の多年草。中国大陸原産で,まれに日本でも栽培される。高さ 1mほどになり羽状複葉を互生する。夏に,葉腋に花穂を出し,淡紫色の蝶形花を総状につける。根を干したものを「甘草」と呼び,咳止め,鎮痛剤などに使い,また甘味料にも用いた。

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