モンゴル

百科事典マイペディア 「モンゴル」の意味・わかりやすい解説

モンゴル

◎正式名称モンゴル国Mongolia/Mongol Uls。◎面積−156万4100km2。◎人口−265万人(2010)。◎首都−ウランバートルUlaanbaatar(97万9800人,2006)。◎住民モンゴル人90%(うちハルハ人は全人口の80%),ほかにトルコ系のカザフ人,中国人など。◎宗教−ラマ教。◎言語モンゴル語ハルハ語,公用語)が大部分。◎通貨−トゥグルク。◎元首−大統領,エルベグドルジTsakhia Elbegdorj(2009年6月就任,2013年7月再任,任期4年)。◎首相−サイハンビレグChimed Saikhanbileg(2014年11月就任)。◎憲法−1992年2月発効。◎国会−一院制,モンゴル国民大会議(定員76,任期4年)。最近の選挙は2012年6月。◎GDP−53億ドル(2008)。◎1人当りGDP−483ドル(2006)。◎農林・漁業就業者比率−26%(1997)。◎平均寿命−男63.0歳,女69.6歳(2007)。◎乳児死亡率−26‰(2010)。◎識字率−97.8%(2003)。    *    *アジア中央部,モンゴル高原の北部を占める国。平均の標高は1580m。北西部ほど高く,南東部はゴビ砂漠をなす。その中間に国の大半を占める草原地帯が横たわり,古くから遊牧民族が活躍する舞台となった。古来,住民の唯一の生活手段は遊牧であったが,現在では農牧業従事者は就労者数の半分以下で,国民総生産でも鉱工業が首位を占め,都市人口のほうが上回る。工業はウランバートルを中心に行われており,同市が都市人口の半分を占める。地下資源としては石炭,銅,モリブデン,蛍石,金などがあり,銅は輸出の第1位を占めている。 生活は,地方では古い遊牧様式をのこす面が多く,移動性のゲル(パオ)に住む。かつて生活の末端まで支配したラマ教(チベット仏教)は,革命によって権力を失ったが,1990年代の改革のなかで再生しつつある。また国民の99%は文字の読み書きができなかったが,革命後は教育が普及し,小学校から大学まで建てられた。文字は1941年から古いモンゴル文字に代わってロシア文字を使用していたが,1990年の改革後,再びモンゴル文字を採用した。改革がすすむなかで伝統への回帰が広くみられ,民族的祝祭〈ナーダム〉が各地で盛大に催されている。 モンゴル帝国崩壊後,中国の支配を受け,1691年からは清朝の支配下にあった。ロシア革命の影響によって民族意識が高まり,スヘバートルチョイバルサンの指導で,1921年革命を起こして独立を宣言,ラマ教の活仏を元首とする君主政体のもとに人民政府を樹立した。1924年活仏が死去すると人民共和国を宣言,社会主義国家の建設に向かった。1990年モンゴル人民革命党の一党独裁体制を廃し,1992年の新憲法には社会主義の表現が消え,国名も単に〈モンゴル〉と改められた。市場経済への移行,対外開放も急速に進められている。1996年の総選挙では野党連合が人民革命党に圧勝し,非共産系政権が発足したものの,翌年の大統領選挙では人民革命党出身のバガバンディが現職大統領を破った。1997年世界貿易機関(WTO)に加。2000年7月総選挙では人民革命党が圧勝し,政権を奪取。2004年6月総選挙で,人民革命党と野党・祖国民主連合の議席が伯仲した。2005年の大統領選挙では,前首相で人民革命党党首,国会議長のエンフバヤルが当選。2009年5月の大統領選挙でエルベグドルジ元首相が当選。
→関連項目経済連携協定外モンゴル蒙古

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンゴル」の意味・わかりやすい解説

モンゴル
Mongol

正式名称 モンゴル国 Mongol Uls。
面積 156万4100km2
人口 338万8000(2021推計)。
首都 ウラーンバートル

1924~92年はモンゴル人民共和国。アジア大陸の中部,モンゴル高原にある内陸国。北をロシア,他の3方を中国に囲まれる。行政上は 18の州 (アイマク ) と3特別市 (ウラーンバートル,ダルハン,エルデネト) に分かれる。地形は北西部の山地と,南東部の東部モンゴル高原に大別される。国土の平均標高は 1580m。山地は西部国境線沿いのモンゴルアルタイ山脈が 4000m級の高山を連ね,山容も険しいが,北西部のハンガイ山脈,北東部のヘンティー山脈では高度も減じ,山容も穏やかである。東部モンゴル高原は大部分が砂礫土壌の半ステップで,ヤギ,ヒツジ,ラクダが放牧されている。南部の国境沿いには植生のまばらなゴビが広がる。内陸の高原にあるため,大陸性気候で,年降水量は 50~300mm,気温の日較差,年較差がともに大きい。山脈の北斜面は比較的降水量が多く,森林が繁茂している。ハンガイ山脈,ヘンティー山脈ではなだらかな山腹に草原が広がり,ヒツジとウシの放牧が盛ん。北斜面を流れるオルホン川,セレンゲ川 (→セレンガ川 ) 流域ではコムギや飼料作物などが栽培されている。住民の大部分はモンゴル系のハルハ族で,西部や北部には同じモンゴル系のオイラート族やブリヤート族も住む。西端のバヤンウルギー州はチュルク語系のカザフ族が多数を占める。公用語はモンゴル語系のハルハ語。主産業は牧畜と,畜産品加工の軽工業であるが,建設・建材工業,また特に鉱業の発展に力が注がれており,三つの特別市がその中心となっている。鉄道は未発達であるが,自動車道と航空路が首都と州都の間を結んでいる。 (→モンゴル史 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「モンゴル」の解説

モンゴル
Mongol

内陸アジア北東部の草原地帯の歴史的呼称。中世以降,モンゴル系遊牧民族の住地となったためモンゴリアとも呼ばれる
北はシベリア,南は万里の長城,東は興安嶺,西はアルタイ山脈までで,ゴビ砂漠以北を外モンゴル,以南を内モンゴルと呼んでいる。乾燥した草原地帯のため,その住民は遊牧を営む民族で,トルコ系の鉄勒 (てつろく) ・鮮卑 (せんぴ) ・突厥 (とつけつ) ・ウイグル・キルギス,モンゴル系の匈奴 (きようど) ・柔然 (じゆうぜん) ・契丹 (きつたん) ・モンゴルなどである。13世紀にチンギス=ハンがモンゴル帝国を建設したことから,この名がこの地域一帯に拡大した。明代には東のタタール部と西のオイラート部に分かれて対立・抗争を続け,明朝にも侵入した。清代になるとまず内モンゴルが,ついで外モンゴル(ハルハ部)がこれに服属し,史上初めて中国の支配下にはいった。1911年辛亥革命が起こると,外モンゴルに独立運動が起こり,24年モンゴル人民共和国が成立し,遊牧社会の近代化が開始された。内モンゴルでも中華民国時代に独立の傾向を示し,47年中国共産党の指導下に内モンゴル自治区人民政府が成立した。1949年に中華人民共和国が成立するとこれに参加し,自治区となった。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

精選版 日本国語大辞典 「モンゴル」の意味・読み・例文・類語

モンゴル

(Mongol) ユーラシア大陸中央部にある国。ゴビ砂漠とその以北のモンゴル高原の大部分を占め、北はロシア、南は中国内モンゴル自治区に接する。一九二一年中国から独立。二四年に人民共和国が成立し、九二年モンゴル国に改称。住民はモンゴル人。首都ウランバートル。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典 第2版 「モンゴル」の意味・わかりやすい解説

モンゴル【Mongolia】

正式名称=モンゴル国Mongol ulus面積=156万6500km2人口(1992)=215万6300人首都=ウランバートルUlaan‐baatar(日本との時差=-2時間)主要言語=モンゴル語(ハルハ方言)通貨=トゥグルクTöglög
[概観]
 アジア大陸東北部に位置する,モンゴル人による国家。1924年より90年までは,モンゴル人民共和国といった。〈モンゴル〉というと,地理的ないしは民族的名称として,中華人民共和国の内モンゴルなども含める場合があるので,日本では,国家名としては区別して〈モンゴル国〉と表記することもある。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内のモンゴルの言及

【モンゴル族】より

…アルタイ系の民族の一つ。言語学的にモンゴル系の諸言語(モンゴル諸語)を話すか,かつて話していた人々の子孫を指す。その主要な居住地は,モンゴル全域,中華人民共和国の内モンゴル(蒙古)自治区,新疆ウイグル(維吾爾)自治区,ロシア連邦のブリヤート共和国,カルムイク共和国である。…

【遊牧】より

…これら定着農耕的村落や都市民との,畜産物と農産物との交換という,流通上のかかわりを牧畜民がもち始めるとともに,1ヵ所を本拠として定める移牧的,つまりより計画的移動をする牧畜形式が発生したと考えられる。ただしこの地域でも,なお遊牧的生活は残りつづけただけでなく,中央アジアやモンゴル草原に牧畜が展開し,ラクダの家畜化とともに半砂漠が牧畜の適地とみなされ始めると,遊牧民は定着的農耕民と対立し,固有な生活様式,社会組織,支配機構をもつものとして立ち現れてくることになる。 その社会組織の一つの特徴は,父系的親族組織であり,壮年男性を中心とした一種の戦士的集団の形成である。…

※「モンゴル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

サルノコシカケ

サルノコシカケ科やその近縁のキノコの総称。日本では4科約40属300種が知られ,ブナ林に日本特産種が多い。樹木の幹につき,半円形,木質で厚く堅く,上面には同心円紋があるものが多い。下面には無数の穴があ...

サルノコシカケの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android