オントロジー(読み)おんとろじー(英語表記)ontology

翻訳|ontology

図書館情報学用語辞典 第5版 「オントロジー」の解説

オントロジー

対象世界にかかわる諸概念を整理して体系づけ,コンピュータにも理解可能な形式で明示的に記述したもの.元来は哲学上の「存在論」を意味するが,コンピュータ科学(主に人工知能・知識工学分野)においては上記の定義で研究開発が進められてきた.21世紀に入りセマンティックウェブが提唱されると,意味レベル(用語・概念)の相互運用性にかかわる中核的な要素技術としてさらに注目されることとなった.2004年,W3Cによりオントロジー記述言語OWL(Web Ontology Language)の仕様が勧告された.図書館情報学分野では分類法やシソーラス等との親和性が注目されるが,これらをオントロジーではなく知識組織化体系として表現するSKOSというW3C規格が存在している.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オントロジー」の意味・わかりやすい解説

オントロジー
ontology

エキスパートシステムセマンティックウェブなどで使用される概念を定義するための辞書。オントロジー記述言語によって記述される。エキスパートシステムやセマンティックウェブなどのように記号的な知識表現を用いたシステムを開発し利用するとき,システムで用いられる概念とそれを表す名前に関して,開発者とユーザーの間で一定合意を形成し齟齬をなくすとともに,再利用や相互運用性を高めることを目的としている。オントロジー記述言語としては,OWLなどが知られている。OWLはセマンティックウェブにおける語彙(名前の集まり)を厳密に定義するために開発され,2004年に WWWコンソーシアム W3Cによる標準勧告に採用された。OWLでは,名前が表す概念はクラスと呼ばれ,与えられたクラスの上位クラス,下位クラス,同等のクラス,排他的なクラス,クラス間の論理演算,クラスの属性を規定するプロパティ,プロパティへの制約などが記述できる。また,オントロジーは,時間空間物質物体プロセスなどにかかわる抽象性が高い概念から構成される上位オントロジー,診断設計,計画立案などの問題解決タスク概念を記述したタスクオントロジー,個別の対象領域に関わる概念を記述したドメインオントロジーに分類される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オントロジー」の意味・わかりやすい解説

オントロジー
おんとろじー
ontology

もともとは哲学の存在論のことだが、最近、ウェブ上の情報の意味を扱い、セマンティックウェブに格上げして人工知能(AI)が扱えるようにしようとする研究分野では、対象を表現するための概念と、概念間の関係を規定するものという意味で使われている。オントロジー工学は、AIの初期から研究されていた知識表現と同じと考えてよい。また、知識表現で問題にされていた、上位概念(たとえば鳥)から下位概念(たとえばワシ/ニワトリ)への属性(たとえば飛ぶこと)の継承/非継承などに関しては、同じ問題が再度議論されている感がある。

 また、問題ドメインごとに異なるオントロジーが構築されていたり、さらには同じドメインであっても組織ごとに異なるオントロジーが使われていたりする例も多く、オントロジー間の翻訳も必要である。たとえば西暦と和暦であったり、同じ魚が別の名前でよばれることがあったりするが、オントロジーはこれらをそのまま反映してつくられていることが多いのでそれらを統一する必要がある。

[中島秀之 2019年7月19日]

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世界大百科事典(旧版)内のオントロジーの言及

【知識表現】より

…最近では,知識獲得の困難さを克服するための試みとして,知識の共有化や再利用の方法,ならびに問題解決に必要な知識をデータベースから自動的に抽出する方法に関する研究開発が進んでいる。前者,共有・再利用可能な形式に整えられた知識をオントロジーという用語で呼ぶ場合がある。後者は,人工知能の機械学習やデータベース,統計手法との関連が強く,データベースからの知識発見(知識発掘),あるいはデータマイニングという用語で呼ばれている。…

※「オントロジー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」