ウンラン(読み)うんらん

改訂新版 世界大百科事典 「ウンラン」の意味・わかりやすい解説

ウンラン (海蘭)
Linaria japonica Miq.

海岸砂地に生えるゴマノハグサ科多年草。花がランを思わせるので,海蘭とついたといわれる。茎は斜上して高さ20~30cm。葉はやや肉質で緑白色,楕円形で対生または輪生し,上部のものは互生する。夏に茎の先に短い総状花序をつくり,数個の花をつける。花は黄白色で,黄橙色の花喉が盛り上がった仮面上花冠である。長さ1.5~2cm,花冠の筒の基部に長さ0.5~1cmの後方に伸びる距がある。果実球形で径8mmほど,多数の黒色の種子があり,上部が不規則に裂けて種子を散らす。千島サハリン,ウスリー地方,北海道,本州の関東・中部以北および瀬戸内海沿岸に分布する。本来は北方系の植物であるが,瀬戸内海に分布するのは,昔の交易の影響かと考えられる。ヨーロッパから朝鮮にかけて見られるホソバウンランL.vulgaris Mill.(英名toadflax)が北海道や長野県に,北アメリカ産のマツバウンランL.canadensis(L.)Dum.が近畿地方に帰化している。ウンランとその近縁種は100種以上あり,花がきれいなので花壇にも植えられる。ホソバウンランなどは薬用にもされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウンラン」の意味・わかりやすい解説

ウンラン
うんらん / 海蘭
[学] Linaria japonica Miq.

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科)の多年草。葉は肉質で長楕円(ちょうだえん)形、全縁で緑白色。夏、短い総状花序に数個の花をつける。花冠は黄白色の仮面状花冠で、花筒の基部には距(きょ)があり、上唇は反り返り下唇の花喉(かこう)部は橙黄(とうこう)色で著しく盛り上がる。海岸の砂地に生え、本州の日本海側と千葉県以北の太平洋側、北海道、樺太(からふと)(サハリン)、ウスリー地方、朝鮮半島に分布する。瀬戸内海沿岸にも分布するが、これは昔、北海道や北陸地方との舟による交易と関係するのではないかと考えられる。名は、花がランに似るのでいう。

山崎 敬 2021年8月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウンラン」の意味・わかりやすい解説

ウンラン
Linaria japonica

オオバコ科の多年草。日当たりのよい海岸の砂浜に生える。高さ 10~30cm,全体が粉白色で,茎は地面をはうか斜上する。葉は長さ 1.5~5cm,幅 0.5~2cmのやや先のとがった楕円形で肉質,葉柄はなく,つき方は互生,対生または 3~4枚輪生などさまざまである。8~10月,茎の先に短い総状花序をなす,ラン(蘭)に似た白と黄の美しい花をつける。日本では北海道と千葉県以北の太平洋岸および鳥取県以北の日本海岸,四国北部に分布する。

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百科事典マイペディア 「ウンラン」の意味・わかりやすい解説

ウンラン

ゴマノハグサ科の多年草。北海道〜四国,東アジアの海岸の砂地にはえる。全体に緑白色で,茎は斜上ないし匍匐(ほふく)し,長さ20〜40cm。葉は楕円形で対生または輪生する。夏,茎の上部に数個の花がつく。花冠は長さ1.5〜2cm,黄白色,仮面状で距があり,下唇(かしん)の中央部は黄色をおびる。果実は頂部に穴があき種子が散る。名は,海辺にはえ,ランに似た花をつけることによる。

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