アレンガ(読み)あれんが

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレンガ」の意味・わかりやすい解説

アレンガ
あれんが
[学] Arenga

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)クジャクヤシ亜科クロツグ属の総称。熱帯アジアに16種、日本に2種自生種がある。幹は単幹直立のものと萌芽(ほうが)株立ちのものがある。葉は羽状葉で、表面は暗緑色、裏面は灰白色、葉鞘(ようしょう)は黒色で繊維質である。雌雄同株で単性花をつける。肉穂花序は橙黄(とうこう)色で、楕円(だえん)形の核果をつける。単幹種は結実後枯死するが、株立ち種は若幹に交代する。代表種にサトウヤシsugar palmA. pinnata Merr.とクロツグA. engleri Becc.がある。

 サトウヤシは、幹の高さ12~17メートル、直径30センチメートル、葉は長さ6~7メートル。葉軸は斜め上に直伸し、葉鞘の繊維は太くて強く、ほうきにされる。インドを中心に東南アジアに自生する。サトウヤシは砂糖のとれるヤシの俗称でもあり、産業的に栽培されるのはオウギヤシBorassus flabellifer L.、サトウナツメヤシPhoenix sylvestris Roxb.、チリーヤシJubaea spectabilis HBK.の3種である。自生地によって、酒ヤシtoddy palmともよばれる。花序の柄の切り口から出る樹液をすばやく煮詰めてとれる糖蜜(とうみつ)から砂糖をつくる。樹液のまま放置するとヤシ酒となり、蒸留酒にする。

 クロツグは日本原産種のヤシで、株立ち幹の高さは2メートル以下、葉の長さは3メートル以下の小形のヤシである。小葉の長さは40センチメートル、幅2.5センチメートル。観賞用とされるが、0℃くらいでも越冬する。南西諸島台湾に自生する。コガネクロツグA. tremula Becc.はクロツグより種子が小さく、沖縄、台湾に自生する。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

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