蒸留酒(読み)じょうりゅうしゅ

精選版 日本国語大辞典 「蒸留酒」の意味・読み・例文・類語

じょうりゅう‐しゅ ジョウリウ‥【蒸留酒】

〘名〙 穀類や果実などを、発酵させ、さらに蒸留してつくった酒。ウイスキーブランデーラム酒、焼酎(しょうちゅう)など。
※日本‐明治四〇年(1907)二月二五日「日本酒は蒸留酒に非ざれば」

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デジタル大辞泉 「蒸留酒」の意味・読み・例文・類語

じょうりゅう‐しゅ〔ジヨウリウ‐〕【蒸留酒】

醸造酒・醸造かすなどをさらに蒸留してつくる、アルコール分が多く、味の強烈な酒。ウイスキーブランデーウオツカラムテキーラジン焼酎しょうちゅうなど。→醸造酒
[類語]醸造酒混成酒合成酒酒類さけるい酒類しゅるい般若湯アルコール御酒お神酒銘酒美酒原酒地酒忘憂の物日本酒清酒濁酒どぶろく濁り酒生酒新酒古酒樽酒純米酒灘の生一本本醸造酒吟醸酒大吟醸冷や卸し屠蘇とそ甘露酒卵酒白酒甘酒焼酎泡盛ビール葡萄酒ワインウイスキーブランデーウオツカラムテキーラジン焼酎リキュール果実酒梅酒薬酒やくしゅみりん白酒しろざけ紹興酒ラオチューマオタイチューカクテルサワージントニックジンフィーズカイピリーニャマティーニ

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改訂新版 世界大百科事典 「蒸留酒」の意味・わかりやすい解説

蒸留酒 (じょうりゅうしゅ)

穀類や果実などを原料とし,これらを発酵,蒸留してつくった酒。ビールや白ブドウ酒の発酵液(もろみ)を蒸留したものが,それぞれモルトウィスキーやブランデーであるように,伝統的醸造酒には対応する蒸留酒がある。

 形状からみて,蒸留に使われたと思われる土器は,紀元前3000年ころのメソポタミア文明の遺跡から出土しているが,ブドウ酒の蒸留を記録したのはアリストテレス(前384-前322)がはじめである。前4世紀末以降,アレクサンドリアを中心に花開いたヘレニズム文化錬金術を発達させ,銅製の蒸留機アランビックがその道具として使われた。アランビックは,ヘレニズム文化の伝播(でんぱ)にともない,蒸留技術とともに東西にひろまった。現在,世界の蒸留酒に使われている蒸留機には,単式蒸留機と連続式蒸留機とがあるが,いずれもアランビックを基本とし,それを改良,変形したものといえる。すなわち,アレクサンドリア時代のアランビックは,細口,首長の円底フラスコに,下向きのくちばしをつけた帽子形の頭部(アランビック)を,空冷用としてかぶせたものであった。これを改良して胴太の蒸留缶にアランビックを連結固定したものがコニャックで使われているシャラント型で(図),この型式の蒸留機を一般に単式蒸留機またはポットスチルと呼んでいる。東洋へ伝えられたアランビックは,金属製の釜(かま)やなべと木製の甑(こしき),竹管などを使って組み立てられ,14世紀以降東洋各地に蒸留酒を生んだ。日本では《本朝食鑑》(1697)が〈羅牟比岐(らんびき)〉の名で,これを紹介している。しかし,現在の本格焼酎用蒸留機は,金属製ポットスチルに変わり,甑型のものは沖縄にわずか残っているにすぎない。いっぽう,15~16世紀まで蒸留酒を薬として製造していた西ヨーロッパでは,蒸留を繰り返すと薬効の高まることがわかって,単式蒸留機を積みかさねたような棚式の蒸留塔が考案されるようになった。この塔の最上部にもろみを連続的に注入し,塔下部から100℃の蒸気を吹き込むと,各棚で沸騰と凝縮が繰り返され,アルコール分のより高い留液が連続的にとれる。したがって,これを連続式蒸留機といい,19世紀にブランデーやウィスキーの蒸留に使われるようになった。すなわち,フランスのアルマニャック式蒸留機とイギリスのコフィが改良したパテントスチルである。後者によって得られるグレーンウィスキーは香味が軽く,これをモルトウィスキーと調合することによって,現在スコッチの主流となったブレンデッドウィスキーがつくられるようになった。単式蒸留機の蒸留酒は,アルコール以外の揮発成分を多く含み,原料由来の香りを有し,現在ではモルトウィスキー,コニャック,ヘビーラム,ミディアムラム,キルシュ,テキーラ,および泡盛を含む日本の本格焼酎などが,これで蒸留されている。連続式蒸留機の蒸留酒は,アルコールの純度が高まるほど原料の特徴が失われ,酒はソフト化する。グレーンウィスキー,アルマニャックのほか,19世紀初めまでは単式によっていたウォッカ,アクアビット,ライトラム,さらにブレンド用ブランデー,甲類焼酎(ホワイトリカー)などが,現在この型の蒸留機によってつくられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒸留酒」の意味・わかりやすい解説

蒸留酒
じょうりゅうしゅ

酒類の製造法による分類で、醸造酒、混成酒に対する用語。アルコールを含んだ液(もろみ、果汁など)を加熱すると、アルコールなど揮発性成分は気体となって蒸発するので、これを冷却器に導いて回収することを蒸留という。この蒸留法には2法ある。単式蒸留機(ポットスチル)を用いるものは古くからの方法で、蒸留釜(がま)にもろみを入れ、ひと釜ずつ蒸留していくが、アルコール以外の揮発成分も多く、通常は2回蒸留を行う。製品のアルコール分は20~60%である。モルトウイスキー、ブランデー、本格焼酎(しょうちゅう)(しょうちゅう乙類)などは、この方法でつくられる。これに対して連続式蒸留機(パテントスチル)によるものは、いくつもの蒸留棚を積み重ねた塔に、一定速度でもろみを供給し、連続的に蒸留して95%のほぼ純粋なアルコールをとり、加水、熟成させてつくる。ブレンド用のグレンウイスキー、ウォツカ、しょうちゅう甲類などはこの方法でつくられる。

[秋山裕一]

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飲み物がわかる辞典 「蒸留酒」の解説

じょうりゅうしゅ【蒸留酒】


穀類、果実などの原料を発酵させ、この発酵液(醸造酒)を蒸留して濃縮した酒の総称。ウイスキーブランデーウオッカ焼酎などがこれにあたる。醸造酒にくらべてアルコール度が高い。酒税法上の種類としては、「蒸留酒類」は品目が「単式蒸留焼酎」「連続式蒸留焼酎」「ウイスキー」「ブランデー」「原料用アルコール」「スピリッツ」に該当するものをいう。蒸留して製するものでも不揮発性の香味成分・糖類・有機酸などのエキス分を2度以上含有するものは含まない。⇒醸造酒混成酒

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百科事典マイペディア 「蒸留酒」の意味・わかりやすい解説

蒸留酒【じょうりゅうしゅ】

穀物,果実などを発酵させて作った酒を,さらに蒸留,濃縮してアルコール分を20度以上に高めた酒。ポットスチルを用い香味成分が失われないよう蒸留,これにより独特の風味も生じ,長く貯蔵するほど芳醇(ほうじゅん)になる。おもな蒸留酒として焼酎(しょうちゅう),ウィスキー,ジン,ブランデー,ウォッカ,ラム,コーリャン酒などがある。
→関連項目

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蒸留酒」の意味・わかりやすい解説

蒸留酒
じょうりゅうしゅ
spirits

アルコール発酵液を蒸留して造る酒。発酵液の芳香を含み,アルコール含有率が高い。ウイスキーブランデーウォツカラム焼酎などがある。

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栄養・生化学辞典 「蒸留酒」の解説

蒸留酒

 醸造後に蒸留してアルコールと香気成分を回収して作った酒.アルコール含量の高い酒が得られる.

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世界大百科事典(旧版)内の蒸留酒の言及

【酒】より

… 日本の酒税法では,酒は〈アルコール分1度(容量比で1%)以上の飲料〉と定義され,液体に限らず糖類でアルコールなどの分子をくるんだ粉末状のものも酒とみなされるが,みそ,しょうゆのようにアルコールを1%以上含むものであっても嗜好(しこう)飲料として供しえないものは酒から除外されている。
【酒の種類】
 酒は,製造法のうえから醸造酒,蒸留酒,混成酒の3種に分類されるが,日本の酒税法では清酒,合成清酒,焼酎,みりん,ビール,果実酒類,ウィスキー類,スピリッツ類,リキュール類,雑酒の10種類に分類される。なお酒税法上の種類名を製品に表示することが義務付けられている。…

※「蒸留酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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