アカクローバー(英語表記)red clover
Trifolium pratense L.

改訂新版 世界大百科事典 「アカクローバー」の意味・わかりやすい解説

アカクローバー
red clover
Trifolium pratense L.

牧草として利用するマメ科多年草で,アカツメクサ,ムラサキツメクサともいう。原産地はアジア西部から中東地域で,南ヨーロッパには13世紀に伝わったが,ヨーロッパ全域に普及したのは18世紀になってからである。日本には18世紀にオランダから伝わったが,牧草として栽培されたのは明治初期アメリカからの導入以降である。今では各地の野原路傍に野生化しているものもある。

 株立ちになる茎に互生する葉は3枚の小葉からなる複葉で,長い柄がある。小葉は楕円形で先は平らかややくぼむ。普通,小葉にはV字形の白斑がある。各葉のつけ根から次々に分枝が出て伸び,高さは30~90cmほどになる。夏から秋に茎の先に花穂がつき,30~100個の小花が丸い頭状にかたまって咲く。花は濃赤紫色から淡紅色,まれに白色のものまである。虫媒により他花受精するが,花管の長い蝶形花のため,吻の短いミツバチでは受粉が困難であり,採種には吻の長いハナバチ類による交配が必要である。普通,さやには1粒の種子がはいる。種子は長さ2mmほどのやや扁平な卵形で黄色みを帯びる。主根はまっすぐに長く伸びるが,支根は表層近くに多い。

 やや湿った土地によく生育する。各国に数多くの品種があるが,普通種,マンモス種,中間種の三つに大別されている。単播(たんぱん)のほか,イネ科牧草のオーチャードグラスチモシーなどと混播される。青刈りして家畜に与えるほか,乾草サイレージとして利用する。タンパク質が豊富なすぐれた牧草である。
クローバー
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカクローバー」の意味・わかりやすい解説

アカクローバー
あかくろーばー
red clover
[学] Trifolium pratense L.

マメ科(APG分類:マメ科)の多年草。ムラサキツメクサ、アカツメクサの別名がある。葉は3枚の小葉からなる複葉で、普通、小葉にはV字形の白斑(はくはん)がある。葉柄は長く、葉液(ようえき)から次々に分枝が出て、30~90センチメートルほどになる。夏から秋に、30~100個の小花が球状に集まった花穂がつく。花は濃赤紫色から淡紅色、白色のものまである。茎葉を飼料とし、青刈りや乾草、サイレージとして利用する。アジア西部から中東地域が原産地で、南ヨーロッパには13世紀に伝わった。日本には18世紀にオランダから伝来、牧草としての栽培は明治初期にアメリカから再導入されてからである。現在では各地の山野に広く野生化している。

[星川清親 2019年10月18日]


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世界大百科事典(旧版)内のアカクローバーの言及

【ハチ(蜂)】より

…イギリスの公園などで,天気の悪い肌寒い日に元気に活動している昆虫はこのハチだけということがある。またこれは牧草,ことにアカクローバーの受粉には欠かせないハチである。かつてニュージーランドに羊を導入したイギリス人は,その食物としてアカクローバーをまいたが,ニュージーランドでは種子ができず,毎年イギリスから種子を輸入していた。…

【豆】より

…豆類を産出するマメ科植物は窒素固定を行う根粒菌の共生による根粒を有している。そのため土壌中の窒素分が少ないやせた土地でもよく生育するものも多く,シロクローバー(シロツメクサ),アカクローバー(アカツメクサ),ウマゴヤシなど草本性の種では,牧草として広く利用されるものが多い。マメ科の牧草は土地を肥沃にするだけでなく,タンパク質やアミノ酸の含有量も高いため良好な家畜飼料になる。…

※「アカクローバー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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