アイヌ語地名資料集成(読み)アイヌごちめいしりようしゆうせい

日本歴史地名大系 「アイヌ語地名資料集成」の解説

アイヌ語地名資料集成
アイヌごちめいしりようしゆうせい

一冊 山田秀三監修・佐々木利和編 草風館 昭和五八年刊

解説 本書アイヌ語地名研究にあたって座右におく必読書を集成したものである。収録の基準としたのは研究史的に必読すべきものであって、研究上参照すべき重要文献ばかりではない。収録されているものは「東蝦夷地名考」(秦檍麻呂)、「蝦夷地名考并里程記(上原熊次郎)、「蝦夷地道名国名郡名之儀申上候書付」(松浦武四郎)、「蝦夷地名奈留辺志」(多気志楼主人)、「アイヌ語地名の命名法」(B・H・チェンバレン)、「アイヌ地名考」(J・バチェラー)、「北奥地名考」(金田一京助)、「北海道駅名の起源(高倉新一郎・知里真志保・更科源蔵・河野広道)の八種類である。このうち秦檍麻呂から多気志楼主人のものは本書で初めて活字化されたものであり、チェンバレンバチェラーの著作は本書において新たな訳が与えられた。「アイヌ語地名の命名法」は明治二〇年の「帝国大学文科大学紀要」に収載The Language, Mythology and Geographical Nomenclature of Japanからアイヌ語地名解の部分の翻訳であり、「アイヌ地名考」はA Critical Examination Into Topographical Nomenclatureからの新訳である。「北奥地名考」は金田一京助のアイヌ語地名研究の概論でもあり、研究の方向性を強く示した名著で、現在なおその価値を失っていない。「北海道駅名の起源」は当時の国鉄北海道が昭和四年以来版を重ねてきたものであるが、観光ガイド的な出版物を学問的な水準に引き上げたのは知里真志保らが参画した昭和二五年版で、本書はもっとも評価の高い昭和二九年版を収録してある。また付録として松浦武四郎の東西蝦夷山川地理取調図一具(首尾とも二九鋪)を影印で復刻したが、これは地名を正確に読みとることができることを目的としたので、河川筋などはやや見にくくなっている。本書はアイヌ語地名研究を進めるうえで貴重な文献集となっている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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