蝦夷地名考并里程記(読み)えぞちめいこうならびにりていき

日本歴史地名大系 「蝦夷地名考并里程記」の解説

蝦夷地名考并里程記(地名考并里程記)
えぞちめいこうならびにりていき

一冊 上原熊次郎

成立 文政七年自跋

写本 東京国立博物館

解説 稿本。類本は市立函館図書館・東京大学附属図書館ほか。外題は打付で「松前并東西蝦夷地場所々地名荒増和解 休泊里数山道行程等大概書」とある。書名は外題に添えられた墨書による。東蝦夷地を松前からシレトコまで四三ヵ所、西蝦夷地を知床のルシヤから松前の立石野まで四一ヵ所、里程は合せて五六一里半に及ぶ。現用の地名をあげ、それに「夷語」をあてて、改めて解釈する。解釈にあたっては各地のおさ(長)たちに問いただして判断したというが、なお不明のものなどには「未詳」としている。上原熊次郎は「もしほ草」や「蝦夷語集」といった辞書類を編んだ当代随一の蝦夷通詞であったことから、地名の解釈に際してもその語学力を活用している。日本語にない「トゥtu」には「」と充てた。アイヌ語文法をも視野に入れたすぐれた地名解の資料である。なお本書に付された自跋によって上原熊次郎と上原有次が同一人物であると知れた。本書の写本は外に知られないが、島嶼部の地名解を含んだ類本は数種類存在する。

活字本 アイヌ語地名資料集成

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報