精選版 日本国語大辞典 「み」の意味・読み・例文・類語

(品詞については補注参照) 形容詞や形容詞型活用の助動詞語幹に付いて連用修飾語となる。
① あとに「思う」「する」などの動詞が続き、感情の内容を表現する。→補注(1)。
古事記(712)中・歌謡「道の後(しり) 古波陀をとめは 争はず 寝しくをしぞも うるはし(ミ)思ふ」
万葉(8C後)一七・四〇〇九「玉鉾の道の神たち賂(まひ)はせむ吾が思ふ君をなつかし(ミ)せよ」
※土左(935頃)承平五年一月九日「翁人一人、老女一人、あるが中に心地悪しして、物もものしたばで、ひそまりぬ」
② (「名詞+を…み」「名詞…み」の形で) 原因・理由を表わして連用修飾語となる。…が…なので。…が…だから。
※万葉(8C後)一・五一「女の袖吹きかへす明日香風京を遠(とほみ)いたづらに吹く」
※詞花(1151頃)恋上・二二九「瀬をはや岩にせかるる谷川の割れて末にもあはんとぞ思ふ〈崇徳院〉」
[補注](1)品詞の扱いとしては、接尾語とする説、助詞とする説、四段活用動詞の連用形に相当すると見る説、などがある。
(2)「甘んずる」「重んずる」「安んずる」などは、①の用法による「甘みす」「重みす」「安みす」の変化したもの。

〘接尾〙 (試みる意の「見る」の連用形からという) 動詞または助動詞「ず」の連用形に付き、その並列によって連用修飾語をつくる。対照的な動作または状態を並列してそれが交互に繰り返される意を表わす。…したり、…したり。…したり、しなかったりして。
※万葉(8C後)三・四八一「わきばさむ 子の泣くごとに 男じもの 負(お)ひ見(み)(むだき)(み) 朝鳥の ねのみ泣きつつ 恋ふれども」
※二日物語(1892‐1901)〈幸田露伴〉彼一日「由無き七情の往来に泣きみ笑ひみ過ごししが」
[補注]前項の「み」と同語とされる場合もあるが、前項の「み」は形容詞の語幹に下接し、この「み」は動詞の連用形に下接するので、別語である。

〘接尾〙 形容詞または形容動詞の語幹に付いて名詞をつくる。
① そのような状態をしている場所をいう。「高み」「明るみ」「深み」など。
※万葉(8C後)一九・四二〇七「明けされば 榛(はり)のさ枝に 夕されば 藤の繁美(しげミ)に はろばろに 鳴くほととぎす」
② その性質・状態の程度やその様子を表わす。「さ」と比べると使われ方は限られる。「厚み」「重み」「苦み」「赤み」「面白みに欠ける」「真剣みが薄い」など。
[補注]②の中には、漢語の「味」と混同され、「味」を用いることも、近代には多い。

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デジタル大辞泉 「み」の意味・読み・例文・類語

み[五十音]

五十音図マ行の第2音。両唇鼻音の有声子音[m]と母音[i]とから成る音節。[mi]
平仮名「み」は「美」の草体から。片仮名「ミ」は「三」の全画から。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「み」の意味・わかりやすい解説

五十音図第7行第2段の仮名で、平仮名の「み」は「美」の草体から、片仮名の「ミ」は「三」からできたものである。万葉仮名には甲乙2類あって、甲類に「彌、民、美、瀰、弭、寐(以上音仮名)、三、見、御(以上訓仮名)」、乙類に「未、味、尾、微(以上音仮名)、身、箕(以上訓仮名)」などが使われた。ほかに草仮名としては「(美)」「(見)」「(身)」「(三)」などがある。

 音韻的には/mi/で、両唇を閉じた唇内鼻音の[m]を子音にもつが、「さみしい―さびしい(寂)」「かまみすしい―かまびすしい(喧)」などのように、語によっては[b]と子音交替する場合もある。上代では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。

[上野和昭]

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