しゃぎり

精選版 日本国語大辞典 「しゃぎり」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐ぎり

〘名〙
狂言で、笛だけの演奏。めでたく、にぎやかな雰囲気を作る効果がある。これで一曲が終わるのを「しゃぎりどめ」という。しゃぎりぶえ。
※虎明本狂言・昆布柿(室町末‐近世初)「これからそうしゃ立、三度づつとふ、一段一段おとひて立、しゃぎりにてとまり」
② 民俗芸能や祭礼などの練物(ねりもの)の行列の途中で、笛に太鼓・鉦(かね)をまじえて奏する囃子(はやし)
狂歌吾吟我集(1649)二「精舎には諸行無常となる鐘のしゃぎりしきりにかはる祇園会」
③ 歌舞伎の囃子。太鼓・大太鼓能管によって、一幕の終わるごとに奏される囃子。最終幕の大切(おおぎり)には打たない。
※歌舞伎・大商蛭子島(1784)四立「ひゃうし幕。直ぐにシャギリ
寄席で、一番の次にいれる太鼓をいう。
⑤ (陽気にはやすところから) おだてること。はやしたてること。
浄瑠璃百合稚高麗軍記(1742)四「わなにかけたる亭主がしゃぎり」
⑥ (芝居の「幕切れ」「打出し」から転じて) 終わること。うちどめ。
洒落本・船頭深話(1802)三「さらばしゃぎりと致ませうか」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「しゃぎり」の意味・わかりやすい解説

しゃぎり

(1)狂言の囃子(はやし)。シャギリと書く。能管(のうかん)(笛)だけで演奏する。概して一曲がめでたく和解で終わるとき、登場人物が左右中と跳び「イーヤァ」と掛け声をかけながら片膝(かたひざ)つく型について吹く、浮きやかで軽妙な手法。この囃子で終曲するのをシャギリ留(どめ)といい、流儀によって異なるが、数曲あるいは十数曲がこの演出をとる。

(2)歌舞伎(かぶき)の囃子。歌舞伎囃子のうち「儀礼囃子」に属する。各種のしゃぎりがあり、大太鼓、太鼓、能管の用いられることが多い。ただ「しゃぎり」とよばれる手法は、幕切れの止(と)め柝(ぎ)のあとに演奏され、終幕をはっきり際だたせる効用をもつ。そのほか現在演奏されているものに、元来は座頭(ざがしら)役者の到着を知らせたらしいがいまは舞台の緞帳(どんちょう)を下ろし観客を入場させる合図として打っている「着到(ちゃくとう)しゃぎり」、また松羽目物(まつばめもの)などの幕開きや口上など儀式的な一幕の幕開き・幕切れ、あるいは舞踊物の伴奏音楽に打つ「片(かた)しゃぎり」がある。「片しゃぎり」は儀礼的に用いられるときは太鼓・能管だけで演奏するが、舞踊物に使うときは大太鼓が加えられる。往々「砂切」と書かれるが、語源は不明。

[小林 責]

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