掛け声(読み)かけごえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「掛け声」の意味・わかりやすい解説

掛け声
かけごえ

人に呼びかけたり、調子を整えたり、あるいは気勢を添えたり、力を入れたりするときに発する、一定の短い音声。単に相手の注意を喚起するだけでなく、共同作業、芸能、音楽、スポーツ、武道など幅広く、効果的に用いられる。また、感情や意志を表す場合もある。

 掛け声はわが国の芸能にみられる大きな特色の一つとなっていて、ことに歌舞伎(かぶき)では、観客が俳優の演技をほめるために客席から即興的に勢いよく掛け声を発するが、ときには稚拙な演技に対する批判的な野次(やじ)もある。たいてい俳優の出(で)や演技の高揚したとき、あるいは型の決まったときなどに、屋号(やごう)、代数、住所、芸名などが間合いよくよばれる。適切な掛け声は俳優と観客との交流を深め、劇の雰囲気を盛り上げる効果がある。また能の大鼓(おおかわ)、太鼓(たいこ)、小鼓(こつづみ)の掛け声もそれぞれ独特の調子をもち舞台の緊張感を高めているが、文楽、民俗芸能などでも掛け声がある種の効果を舞台面に反映している。掛け声の発生要因の一つは、宗教的行事の警蹕(けいひつ)にあるともいわれる。

高山 茂]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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