ウソ(読み)うそ(英語表記)bullfinch

翻訳|bullfinch

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウソ」の意味・わかりやすい解説

ウソ
Pyrrhula pyrrhula; Eurasian bullfinch

スズメ目アトリ科。全長 15cm。雌雄ともに頭上,尾羽は濃紺色で,腰は白い。雄は,頬から喉が赤く,背と胸腹部は青みを帯びた灰色。雌は,頬,喉,背,胸腹部ともに灰褐色。繁殖分布は広く,ユーラシア大陸の中緯度地域で,イギリスサハリン島日本にも及ぶ。日本では本州中部以北の山地北海道平地や山地の針葉樹林内で繁殖し,冬季は低地や南へ移動する。太くて短い円錐形のを巧みに使って木の葉,花芽,種子などを好んで食べる。サクラウメの名所に大群で飛来し,つぼみを食べ,その被害が問題になることもある。和名は,柔らかい音色で「うそぶく(口笛をふく)」ように「ふぃー,ふぃー」と鳴くことに由来する。11亜種のうち日本ではウソ P. p. griseiventris のほか,サハリン島で繁殖するアカウソ P. p. rosacea と,カムチャツカ半島で繁殖するベニバラウソ P. p. cassinii が記録されている。アカウソは雄の胸腹部全体が淡い桃色を帯びた灰色をし,冬季に日本に渡来する。ベニバラウソは雄の胸腹部が鮮やかな赤色をし,翼に白帯があり,冬季にはまれに日本でも見られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウソ」の意味・わかりやすい解説

ウソ
うそ / 鷽
bullfinch
[学] Pyrrhula pyrrhula

鳥綱スズメ目アトリ科の鳥。ヨーロッパからアジアの北部にかけて広く分布し、北方で繁殖するものは、南へ渡って越冬する。フィーフィーと口笛のような声で鳴くので、口笛の別称「おそ」から転じて和名がついたといわれる。全長約15センチメートル。太く短い嘴(くちばし)、丸く太った体つきが特徴である。雌雄とも、頭、翼、尾は黒い。雌はほかの部分が灰褐色でじみな姿であるが、雄は上面が青灰色、頬(ほお)から腹にかけては赤い(ただし日本で繁殖する亜種は、頬とのどだけが赤く、下面は淡灰色)。日本では、本州中部以北の針葉樹林や針広混交林で、5~7月に地上から3メートル以下の枝上に巣をかけて4~6個の卵を産む。冬は平地の林で過ごすが、この時期には、別の2亜種ベニバラウソ、アカウソも渡ってきて越冬する。食物は植物質のものが主で、草木の種子、木の芽のほか昆虫なども食べる。山中で木の実りが悪いと、群れで里に降りて、ヨーロッパではスモモ、ナシ、リンゴ、アンズなどの果樹の花芽やつぼみを、日本ではサクラのつぼみを食害することがある。嘴で一つずつもぎ取ったサクラのつぼみをそのまま飲み込むのではなく、鱗皮(りんぴ)や包(ほう)は吐き出し、小さな花の芯(しん)だけを食べる。姿も声も愛らしいので、かつてはヨーロッパでも日本でも飼い鳥として賞用された。

[竹下信雄]


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改訂新版 世界大百科事典 「ウソ」の意味・わかりやすい解説

ウソ (鷽)
bullfinch
Pyrrhula pyrrhula

スズメ目アトリ科の鳥。全長約16cm。スズメより少し大きく,丸みのあるくちばしをもつ。雌雄異色。雄はほおが赤みの強いばら色で,体は明るい灰色をしている。頭の上部,翼,尾は光沢ある黒色。雌は体がにぶい褐色で,ほおが赤くない。ユーラシア大陸の中・高緯度地方の針葉樹林帯に広く分布し,日本では本州以北の亜高山針葉樹林で繁殖し,冬には山ろくや低地へ降りてくる。しかし冬鳥として北千島やカムチャツカから渡来するものも多い。ずんぐりしていて,動作はにぶい。木の芽,葉,花などを好んで食べる。このためウメ,サクラ,リンゴなどのつぼみに大害を加えることがある。一夫一妻で繁殖し,なわばり性はあまり強くない。針葉樹の枝の上にわん形の巣をつくり,1腹4~6個の卵を産む。口笛のようにフィッと柔らかい声で鳴く。
鷽替え
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世界大百科事典(旧版)内のウソの言及

【鷽替え】より

…太宰府天満宮で1月7日に行われる神事。夜,明りを消した境内で参詣者どうしが木製の鷽を交換し合うもので,中に神社から出される金の鷽が混じっていて,替え当てた人は幸運を得るとされている(イラスト)。年間の不幸を鷽と共に神社に納めようとするものであるが,本来は神前の供え物を奪い合う年占の一種ではなかったかという。京都北野神社,大阪の天満宮,東京亀戸天神などにも類似の行事があり,1月25日に行う所もある。【田中 宣一】…

※「ウソ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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