日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳴子(狂言)」の意味・わかりやすい解説
鳴子(狂言)
なるこ
狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。和泉(いずみ)流だけの曲。田を荒らす群鳥(むらとり)を追いに行くよう主人に命じられた太郎冠者(シテ)と次郎冠者は、山の田に着き、鳴子縄を稲木(いなぎ)(ワキ柱と目付(めつけ)柱)に結び、「ホウ、ホウ」と掛け声をかけながら鳴子を打ち鳴らす。そこへ主人が酒樽(さかだる)を持って慰労にき、日が暮れたら戻れといって帰る。さっそく酒宴を始めた2人は、小歌をうたい、鳴子を引きながら舞い興じるうちに寝込んでしまう。あまり帰りが遅いので迎えにきた主人が2人の酔態をみつけ、揺り起こして追い込む。鳴子を打ち鳴らしながら2人がうたう、引くもの尽しや名所尽しの謡を聞くうちに、舞台いっぱいに実り豊かな田園風景が広がる、叙情味たっぷりの秋の名曲。
[油谷光雄]