日本大百科全書(ニッポニカ)「電気回路」の解説
電気回路
でんきかいろ
electric circuit
抵抗器、コンデンサー、コイル等の回路素子が互いに接続された電流の流れる通路全体をいう。単に回路ともいう。ダイオード、トランジスタや半導体集積回路(IC)等の電子部品(電子デバイス)を含む場合を電子回路とよび、区別する場合もある。抵抗器、コンデンサー、コイル、ダイオードのようにエネルギーを発生したり増大したりしない素子を受動素子とよび、トランジスタや真空管などのようにエネルギーを発生または増大する素子(厳密にはエネルギーを変換する素子)を能動素子とよぶ。これらの回路素子の機能を果たすハードウェアを回路部品という。
回路は目的に従っていろいろな呼び方をする。たとえば、直流を扱う回路を直流回路、交流を扱う回路を交流回路、コンピュータを構成する回路を論理回路、そのなかで演算を行う回路を演算回路、アナログ信号を扱う回路をアナログ回路、デジタル信号を扱う回路をデジタル回路などという。回路の性質を取り扱う学問分野を回路理論という。これには、入力に対する回路の応答を明らかにする「回路解析学」と、所要の応答を示す回路の作り方を明らかにする「回路合成学」とがある。回路を表記するには、国際的にほぼ統一された「電気用図記号」を用いる。
[布施 正・吉澤昌純]
受動回路・能動回路
受動素子だけで構成されている回路を受動回路、能動素子を含む回路を能動回路とよぶ。受動回路は多くの場合出力が入力に比例する性質がある。このような回路を線形回路とよぶ。これに対して、能動回路では出力は入力に比例しない性質がある。このような回路を非線形回路とよぶ。発振回路がその典型である。増幅回路も非線形回路であるが、信号の強さが微弱な場合は出力が入力に比例するので、近似的に線形回路として扱うことが多い。
[布施 正・吉澤昌純]
分布定数回路・集中定数回路
回路の寸法がその回路に加わる電圧や、回路を流れる電流、あるいは回路上を伝わる電磁波の波長と同程度以上になると、電圧や電流、または電磁波は干渉をおこして回路に定在波を生ずる。このような回路を分布定数回路という。回路に定在波が生じると多くの場合は障害となるが、定在波を利用して共振器を構成することができる。分布定数回路の例としては、アンテナやフィーダーなどがある。
また、マイクロ波で用いられる導波管なども分布定数回路であり、その形状から立体回路とよばれる。これに対して、回路の寸法が波長に比べて十分小さい場合は、電圧・電流などの干渉は無視できる。このような回路を集中定数回路という。集中定数回路の例としては、家庭の電灯・電熱器およびその配線や、低周波のエレクトロニクス機器の回路などがある。
[布施 正・吉澤昌純]