鈴木正三(すずきしょうぞう)(読み)すずきしょうぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

鈴木正三(すずきしょうぞう)
すずきしょうぞう
(1579―1655)

江戸初期の仮名草子作家、僧侶(そうりょ)。名は重三(しげみつ)、九太夫(きゅうだゆう)とも。法号は俗称を音読して正三(しょうさん)。石平道人(せきへいどうにん)、玄々軒(げんげんけん)とも号した。三河国(愛知県)の武家に生まれ、徳川家康(とくがわいえやす)・秀忠(ひでただ)に200石をもって仕え武功があった。1619年(元和5)剃髪(ていはつ)して曹洞禅(そうとうぜん)を修め、世法即仏法(せほうそくぶっぽう)を説き仁王(におう)禅を提唱した。諸国遍歴ののち故郷の石平山恩真寺に住したが、島原の乱に従軍、のちに天草で寺を建立してキリスト教根絶を志し、『破吉利支丹(はきりしたん)』を著した。1648年(慶安1)江戸へ出て、牛込(うしごめ)に了心庵(あん)を結び、教化と述作に従ったが、77歳で末弟重之(しげゆき)の家に没した。彼の説法弟子恵中(えちゅう)(1628―1703)が筆録した『驢鞍橋(ろあんきょう)』や、その著『盲安杖(もうあんじょう)』『麓草分(ふもとのくさわけ)』などは仏教啓蒙(けいもう)書であり、『因果(いんが)物語』『念仏草子』『二人比丘尼(ににんびくに)』などは典型的仮名草子と称せられている。

[青山忠一 2017年8月21日]

『鈴木鉄心編『鈴木正三道人全集』全1巻(1954・正三道人三百年記念会/1962・山喜房仏書林)』『藤吉慈海著「鈴木正三の念仏思想」(『仏教文学研究 6』所収・1968・法蔵館)』

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