金融効率化(読み)きんゆうこうりつか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融効率化」の意味・わかりやすい解説

金融効率化
きんゆうこうりつか

資金余剰主体(家計等)から資金不足主体(企業等)への資金移動、および両者の間の投資活動の効率化を図ること。

 金融とはお金の融通、つまり貸し借りのことである。現実経済でそのようなお金の貸借、換言すれば金融取引が行われるのは、資金余剰主体と資金不足主体が混在しているからである。市場経済のなかでは前者の代表が家計、後者の代表が企業である。資金余剰主体である家計は生産活動を行う企業に資金を貸し出すことで、さらなる利益を獲得する機会が生まれる。一方、資金不足主体である企業は家計から資金を借り入れることで、生産活動を拡張する機会が得られる。このように、金融取引は両者の経済水準を向上させ、それはひいてはマクロ経済の発展にもつながることになる。

 しかし、家計と企業がそのような取引を直接的に行うのは容易ではない。サーチ・コスト(探索費用)やモニタリング・コスト(審査費用)など、両者にとってさまざまな取引費用が伴うからである。

 その両者の間に介在して金融取引の仲介を行うのが、銀行等の金融仲介機関である。したがって、資金余剰主体から資金不足主体への資金移動、および両者の間の投資活動の効率化を図るということは、金融機関の仲介機能を高めるということである。それは、金融機関の競争意識を促したり、行動範囲を広めたり、ときには機能不全に陥った金融機関を政策的にサポートするといったことである。つまり、近年において日本で行われてきた一連の金利自由化や金融制度改革がそうであり、さらに銀行等に対する公的資金投入といったことも、一面では金融効率化という枠組みでとらえることができるのである。

 なお、金融効率化は資金配分上の効率性allocational efficiencyおよび運営上の効率性operational efficiencyという観点から評価されなければならない。前者は高い生産性をもつところに、より多くの資金が流れることであり、後者は低いコストで、高いリターンの金融取引が実現されることである。これまで日本でなされてきたものは、おもに前者の視点に立ったものであった。金融効率化は後者もあってはじめて成り立つものである。そのような意味でこれからは、金融のソフト面、具体的には電子マネーデリバティブといった、金融商品および金融技術の開発、さらにそれに伴うリスク管理の向上などが求められてくるといえる。

[原 司郎]

『岩田規久男・堀内昭義著『スタンダード経済学シリーズ 金融』(1983・東洋経済新報社)』『池尾和人著『現代の金融入門』(ちくま新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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