金属汚染(読み)キンゾクオセン

化学辞典 第2版 「金属汚染」の解説

金属汚染
キンゾクオセン
metal pollution

大気土壌水質などの自然環境や,食品,生活用品に支障をきたす有害物質が混入することを汚染といい,混入物質が金属によるものを金属汚染という.一般には,人間の社会活動が原因となる人為的な汚染をいうが,火山活動などによる自然災害によるものもある.その特性から,バッテリー,乾電池塗料顔料,プラスチックなどに使われる,鉛,水銀カドミウムマンガンなどによる海洋汚染や土壌汚染が,深刻な問題を引き起こしている.遊離金属イオンは生体内のカルシウム恒常性を変化させ,カルシウムに依存する細胞内情報伝達系,神経伝達系などを阻害することが知られており,鉛は中枢神経系に作用し,精神遅滞や学習障害,さらに不妊,発育阻害の原因となる.水銀汚染では,有機水銀(メチル水銀)が原因となり,中枢神経障害から感覚障害,運動失調,視野狭さく,難聴などを引き起こした水俣病(熊本県水俣湾周辺,新潟県阿賀野川流域)がある.さらにカドミウム汚染では,肝障害,内分泌異常およびカルシウム不足による骨軟化症を引き起こすイタイイタイ病(富山県神通川下流域)などが知られている.発症のメカニズムは,金属の二価イオンが,生体内の酵素タンパク質(たとえば-SH残基)と結合して,その機能を阻害することにより,構造タンパク質の形成異常や,細胞の膜透過性の変化が起こり,造血系,細胞内伝達系,遺伝子系,免疫系など,あらゆる機能に影響が現れることにより発症する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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