走かす(読み)はしらかす

精選版 日本国語大辞典 「走かす」の意味・読み・例文・類語

はしら‐か・す【走かす】

〘他サ五(四)〙 (「かす」は接尾語)
① 走らせる。駆けさせる。また、かけつけさせる。逃走させるのもいう。
※前田本枕(10C終)二〇一「おりのぼり、はしらかして見ありく君だちくるまの」
徒然草(1331頃)八七「浅ましくて、をのこどもあまたはしらかしたれば」
② 目や耳などを、すばやく働かせる。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後「いいかげんに空耳をはしらかせヱ、つんぼうめヱ」
屏風や幕などを引きめぐらす。張りわたす。立てめぐらす。
※本福寺跡書(1560頃)生身御影様大津浜御著岸之事「新村柳のもんのまくをはしらかしたり」
※仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)六「隔子の内には金屏風はしらかし」
④ 刀をさやから抜き放つ。さやを払う。
浄瑠璃・花山院后諍(1673)二「渡辺大長刀をはしらかし」
⑤ 割る意の船乗りの忌み詞。ひびを入らせる。くだく。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)二「素頭微塵にはしらかし、命を取り楫此世の出船と」
⑥ 汁などに醤油や油などをちょっとたらし込んだり、菜などをちょっとつまみ込んだりする。手軽に調理する。転じて、手軽に食事をとる。流しこむ。
料理物語(1643)一〇「さていりざけに酢をくはへはしらかし、なます半分にかけて」
浮世草子好色二代男(1684)一「薄鍋に醤油をはしらかし」
[補注]中世末から現われる語で、「前田本枕草子」「堺本枕草子」にも若干の例があるが、三巻本系の諸本や能因本に見られないところから、後世混入と見られる。

わしら‐か・す【走かす】

〘他サ四〙 (「かす」は接尾語) 走らす。走らせる。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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