詩[中国](読み)し[ちゅうごく](英語表記)Shi

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「詩[中国]」の意味・わかりやすい解説

詩[中国]
し[ちゅうごく]
Shi

中国にあって「詩」という言葉は「志」と対比された。すなわち心に内在する志を言語として外に表わしたのが詩であり,その表わし方は舞踏を伴い楽器伴奏に合せた韻律のある「ことば」としてである (『詩経』大序) 。やがてそのメロディーが失われ,その「ことば」はただ朗誦,あるいは単に目で読むだけのものとなって「歌謡」から「詩」となった。中国では民間に新しい歌謡が発達すると,それはやがて同じ経過をたどり,その結果,中国の韻文楽府 (がふ) ,詩,諸宮調散曲などの新しいジャンルを加えていったが,そのうち楽府は通常,詩のなかに含まれて扱われる。内容的に分類すれば抒情詩叙事詩に分けられるが,虚構を排する文学観に従い,かつ志の発動であるべき中国の古典詩は,ほとんどが個人的な体験に基づき,それによって心に引起された感動を述べる抒情詩で,叙事詩はごく少い。形式的には1句の字数による分類と,韻律の規則による分類とがあり,それを組合せて,五言古詩,七言律詩などと呼ぶことが多い。伝統的に文学を重んじる中国にあって,詩はその精華であり,知識人の必須の教養であった。

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