抒情詩(読み)じょじょうし(英語表記)lyric poetry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抒情詩」の意味・わかりやすい解説

抒情詩
じょじょうし
lyric poetry

語源は古代ギリシアのリュラ (竪琴) lyraに合せて歌う詩のこと。すなわち音楽と詩が未分化であった時代,またある出来事の叙述とそれに伴う情緒の表現の間に明確な差異が感じられなかった時代にその起源をもつものである。叙事詩が過去の出来事の展開として,劇詩が未来の結末へ向う行動の発展として,いずれも客観的な出来事をその「対象性」において表現するのに対し,抒情詩の時制は現在であり,しかも主観的な感動をその「状態性」において表現する。したがって長さは他のジャンルに比べて短く,また純粋詩に向う傾向を内蔵する。そして恋愛詩のように純粋に抒情的なものと瞑想 (思想) 詩のように知的な傾向のものなどに分類される。

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百科事典マイペディア 「抒情詩」の意味・わかりやすい解説

抒情詩【じょじょうし】

叙事詩,劇詩と並んで詩の三大部門の一つ。主に詩人の内面,感情や情緒を主観的に表現した詩。古代ギリシアで,リラにあわせて歌われた詩が起源(lyricの語源)。近代以降は詩の主流を占めている。
→関連項目韻文ジャンルスカルド詩ソネットロマンセロンサール

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デジタル大辞泉 「抒情詩」の意味・読み・例文・類語

じょじょうし【抒情詩】[書名]

国木田独歩田山花袋柳田国男宮崎湖処子こしょし太田玉茗が合同で出版した詩集。明治30年(1897)刊。

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世界大百科事典 第2版 「抒情詩」の意味・わかりやすい解説

じょじょうし【抒情詩 lyric】

抒情詩は,叙事詩および劇詩と並んで,古来,詩の三大部門の一つをなしてきたが,この区分は多分に便宜的なものにすぎない。抒情詩そのものがそもそも厳密には定義しがたいものであり,ある事件の推移を忠実に追わなければならない叙事詩と対比して,個人の内心の主観的な感情や情緒を表現することに重きを置く詩を指すと一応はいうことができるとしても,叙事詩,劇詩のなかにも,その種の要素が濃厚に流れこんでいる場合はめずらしくない。

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世界大百科事典内の抒情詩の言及

【詩】より

… だが,それだからといって,韻文作品がすなわち詩であるということにはならない。韻文で書かれた伝承的英雄物語(叙事詩)や,韻文で書かれた運命劇(劇詩)は,かつてはそれぞれ詩の重要な一部門をなすと考えられていたが,今日ではむしろ,詩としてよりも物語として,演劇としての特性から評価される傾向にあり,詩はもっぱら抒情詩を中心として考えられるようになった。この傾向は,文芸思潮史の上では,西欧の18世紀後半から19世紀にかけてのロマン主義以降に顕著となったもので,時代的にははるかに遅れて発足した日本の新体詩においても,その最初期にこそ叙事詩や劇詩,さらには教訓詩などが試みられたものの,ロマン主義思潮の導入とともに同じ傾向を示すようになった。…

※「抒情詩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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