日本大百科全書(ニッポニカ) 「計器」の意味・わかりやすい解説
計器
けいき
諸種の量を計る器具、機械の総称。用途や使用分野によって測定器、計量器、計測器、測量器などとよばれるが、とくに定義や境界があるわけではない。「日本工業規格(JIS(ジス))Z 8103計測用語」では、計器を「(a)測定量の値、物理的状態などを表示、指示又は記録する器具。(b)(a)で規定する器具で、調節、積算、警報などの機能を併せもつもの」と定義し、(a)の備考として「検出器、伝送器などを含めた器具全体を指す場合もあれば、表示、指示又は記録を担当する器具だけを指す場合もある」としている。「計量法」ではその第2条で次の72種の物象の状態の量をあげ、計量とはこれらの量を計ることで、計量器とは計量するための器具、機械または装置であると定義している。
すなわち、それらの量とは、長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度、角度、立体角、面積、体積、角速度、角加速度、速さ、加速度、周波数、回転速度、波数、密度、力、力のモーメント、圧力、応力、粘度、動粘度、仕事、工率、質量流量、流量、熱量、熱伝導率、比熱容量、エントロピー、電気量、電界の強さ、電圧、起電力、静電容量、磁界の強さ、起磁力、磁束密度、磁束、インダクタンス、電気抵抗、電気のコンダクタンス、インピーダンス、電力、無効電力、皮相電力、電力量、無効電力量、皮相電力量、電磁波の減衰量、電磁波の電力密度、放射強度、光束、輝度、照度、音響パワー、音圧レベル、振動加速度レベル、濃度、中性子放出率、放射能、吸収線量、吸収線量率、カーマ、カーマ率、照射線量、照射線量率、線量当量、線量当量率、である(2012年時点)。
これらの物象の状態量のすべてに計器が対応するものではないが、直接的あるいは間接的にこれらを計量する器具、機械または装置がある。また、一つの量に対してもきわめて多種類の計器がある。たとえば長さの計器には、直尺、巻尺、挟み尺(ノギス類)、マイクロメーター、ブロックゲージ、測長機などがあり、さらに干渉計やレーザー測距儀なども加わっている。その他の量についても同じことがいえる。
用途や分野についていえば、前記「計測用語」に工業計器、試験機および分析機器があり、工業計器は「工業計測を行うために用いる計測器」、試験機は「材料の物理的性質、又は製品の品質・性能を調べる装置」、分析機器は「物質の性質、構造、組成などを定性的、定量的に測定するための機械、器具又は装置」と定義されている。
これらの計器は、従来の概念では単品的な器具、あるいは一体となった機械であったが、計器の電子化、装置のシステム化に伴って、検出器、変換器、伝送器、受信器、指示器、記録器などの要素で構成されるようになってきている。これらの要素の定義は「計測用語」によると次のようになっている。
(1)検出器―ある現象の存在を検出する器具又は物質。必ずしも関連する量の値を与えるものではない。
(2)変換器―変換をするための器具又は物質。
(3)伝送器(発信器とあわせて)―検出器からの信号を伝送するため別の信号に変換する機能、又は信号の大きさを変える機能をもつ器具。
(4)受信器―伝送された信号を受け、指示、記録、警報などを行う器具。
(5)指示計器―測定量の値を指示する計器。検出器、伝送器などがあるときは、それらも含めた器具全体を指すこともある。
(6)記録計器―測定量の値を、自動的に記録する計器。検出器、伝送器などがあるときは、それらも含めた器具全体を指すこともある。
さらに計器のなかに調節計、積算計、警報の機能をもつものも含めている。調節計(自動調節計)は「量を自動的に調節する機能をもつ計器。備考:調節器ともいう。」、積算計器は「測定量の時間についての積分値を表す計器。検出器、伝送器などがあるときは、それらも含めた器具全体を指すこともある。備考:積算計又は積算器ともいう。」、警報とは「あらかじめ定めた状態になったとき、それについて注意を促すために信号を発すること又はその信号」である。
[小泉袈裟勝・今井秀孝]