ゲージ(英語表記)gauge

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デジタル大辞泉 「ゲージ」の意味・読み・例文・類語

ゲージ(gauge)

長さ・重量などの物理量を測定する器具の総称。
鉄道軌条の内側の幅。軌間。
編み物で、一定寸法中の編み目の数。
電磁気学で、電磁ポテンシャルの価のとり方。電磁場を記述する方程式の中では、電磁ポテンシャルに関する任意関数として示される。ゲージ関数

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精選版 日本国語大辞典 「ゲージ」の意味・読み・例文・類語

ゲージ

〘名〙 (gauge)
① 鉄道の二本のレールの内側の幅。軌間。
② 工業で、機械製品の寸法、形状などの基準となるもの。また、その検査に用いられる計器の総称。
※ガトフ・フセグダア(1928)〈岩藤雪夫〉四「『ボイラアは冷える一方だ…』『ゲージも、もう上らねえ』」
③ 編み物で、一定寸法中の編目数。また、編機の針の密度を表わす単位区間の針数。「ローゲージのニット」
④ 電磁気学で、電磁ポテンシャルの価のとり方。電磁場を記述する方程式では、電磁ポテンシャルに関する任意関数として示される。

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改訂新版 世界大百科事典 「ゲージ」の意味・わかりやすい解説

ゲージ
gauge

物理現象を数学的に記述する際に,複素波動関数やポテンシャル関数が使用される。これらの関数は,その絶対値や微分した量が,例えば電荷とか力といった観測可能な物理量と関係づけられている。したがって前者の場合には複素量としての位相の,また後者の場合には積分定数に相当する量の不定性をもつことになる。この不定性を表すスカラー量uは,一般には空間座標rあるいは時間tの関数であり,このurt)をゲージまたはゲージ関数と呼ぶ。ゲージという言葉は,現象を記述する舞台である時空のスケールを適当にとるという考え方に由来したものである。

 観測可能な物理量あるいは物理現象を記述する運動方程式は,どのようなゲージをとっても大きさや形を変えてはならない。例えば,電荷eをもつ粒子が,スカラーポテンシャルφ(rt),ベクトルポテンシャルA(rt)より導かれる電磁場中を運動する場合を考えてみよう。その波動関数Ψrt)に,

 Ψrt)-→Ψrt)exp[-ieu]   ……(1)

の位相変換を行った場合でも,電荷密度ρ=eΨΨは不変である(ΨΨの複素共役量)。電流密度や電磁場との相互作用を含んだシュレーディンガー方程式は(1)の変換だけでは形を変えてしまうが,(1)と同時に,φ,Aに対して,

の変換をほどこすと,いずれも不変に保たれる。また(2)(3)の変換は,から導かれる電場Eや磁場Bの形も不変に保っていることを容易に検証することができる。(1)を第1種のゲージ変換,(2)(3)を第2種のゲージ変換と呼ぶことがある。

 ゲージのとり方の任意性をじょうずに利用するとポテンシャルなどを含んだ物理学の方程式を簡単にすることができる。例えばφとAの間に,

束縛条件をおくと(ε,μはそれぞれ誘電率と透磁率),電磁場のマクスウェルの方程式は,

のように,φ,Aに対して対称的なポテンシャル方程式に書き変えられる。またφとAの間に(4)の関係があると電荷の保存を表す,は自動的に満足され,ゲージは電荷の保存則を保証している。(4)の関係を満たすゲージのとり方をローレンツゲージと呼ぶ。

 このように基本的な物理量や基礎方程式はゲージ変換に対して不変となっており,このゲージ不変性は新しい物理理論を作っていく場合の一つのガイドラインとなる。
ゲージ理論
執筆者:

ゲージ
gauge
gage

ゲージは物体の大きさで長さや角度を規定するもので,測定あるいは判断の基準となるものをいう。ゲージは測定中に動く部分をもっていない。ゲージは古くから使われていたが,スウェーデンのプールヘムChristopher Polhem(1661-1751)が18世紀の初めころから使ったプールヘム棒という木製の板ゲージが,記録されているものでは古い。プールヘム棒は後に鉄製となった。人間は長さを測るために,洋の東西をとわず太古からものさしを用いていた。目盛線を用いる測定は,目盛合せにおける個人差や合せにくさによるばらつきがわりあいに大きい。加工部品の互換性が必要となり,精度も高くなってくると線を合わせる測定では満足できないようになった。ホイットワースJoseph Whitworth(1803-87)は,1856年インチ標準ブロックをマイクロメーター式測長器とともに作り,端面を触って行う測定を普及させていった。57年には,基準として同種のものではなく,工作物と対になる逆の形のもの,すなわち穴に対しては円柱,軸に対しては輪,いいかえれば図1に示すようなプラグゲージリングゲージとを用いることによって比較できるようにした。

 構造形式,機能によっていろいろのゲージがある。ブロックの両端面が互いに平行かつ平たんに磨かれ密着する性質をもつ,主として長さの標準として用いられるものがブロックゲージである。機械工作で一つの部品を作るのに,部品に許容しうる最大寸法を基準とした測定端面と,同じく最小寸法を基準とした測定端面とをもつゲージを限界ゲージといい,測定の標準として用いるゲージを標準ゲージという。円板ゲージは円板の直径で長さを示し,円筒形プラグゲージころゲージは円柱の直径で示し,板プラグゲージ平プラグゲージは円柱の一部を測定面にもち,その直径で示す。長いものは棒ゲージで,その測定端面に平面,円筒面,球面をもつものが用いられている。鋼球もゲージとして用いられる。円筒の内面を測定面とするゲージがリングゲージ,平行かつ平面の測定面ではさむ形で軸を測るゲージがはさみゲージである。針金ゲージドリルゲージは大きさに対応した切込み,または穴を多数もつ角形,または円形の薄板でできており,針金やドリルを分類するために用いる(図2)。すきまゲージは厚さが0.03~3.00mmの異なる10枚から25枚を1組とする薄鋼板からなり,適当な薄片を組み合わせて測定に用いる。角度ゲージは記されている角度をなす端面が測定面として磨かれているもので,長さ測定の場合にブロックゲージのような端度器が用いられると同様に,角度の精密な測定に対して用いられる。テーパーゲージは軸,または穴の円錐の傾き,すなわち円錐の直径とその長さの比(テーパー比),または軸線を含む断面内の円錐の母線の間の角度(テーパー角度)を検査するために用いる。ブルー絵具を一様の厚さに塗り,工作物にはめ合わせ,相対的にわずかに回転させ,そのはげる位置,広さでテーパーの大小を知る。入り込む深さからも推定できる。輪郭ゲージは部品の形を検査するためのもので,このゲージを当て,明るい背景ですきまをみて判断する。穴位置を検査するために位置ゲージがある。ねじ検査用には平行ねじゲージとテーパーねじゲージとがある。

 ゲージは計器という意味にも用いられる。例えばダイヤルゲージ,ピストンゲージなどである。
執筆者:


ゲージ
Thomas Gage
生没年:1603?-56

アイルランドの旅行家。カトリック系旧家に生まれ,スペインで教育を受け,ドミニコ会士として1625-37年の間メキシコ,グアテマラで生活。その際スペインとカトリック教会の植民地支配の実態を目撃し,帰国後の42年国教会へ転ずる。48年非スペイン人として初めてスペイン領植民地の実態をあばいた《西インド新見聞録》を刊行し,各国語に翻訳された。55年スペイン領ジャマイカの攻略に参加し,イギリスのカリブ海進出の拠点建設に寄与したが翌年同地で死去した。
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百科事典マイペディア 「ゲージ」の意味・わかりやすい解説

ゲージ

基準の寸法,角度,形状などをもつ測定具の総称。機械部品など工作物の仕上がりが規定の範囲にあるかどうかを確かめるのに用い,測定のときの標準となる標準ゲージと,工作物が公差の範囲内にあるかどうかを検査する限界ゲージがある。ブロックゲージは前者の代表的なもので最も精度が高い。ほかにプラグゲージリングゲージ棒ゲージ角度ゲージ隙間(すきま)ゲージなど。なお計器類,特に圧力計,また鉄道の軌間をゲージと呼ぶこともある。
→関連項目はさみゲージ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲージ」の意味・わかりやすい解説

ゲージ
gauge; gage

次の3様の意味がある。 (1) 定められた寸法,形状,角度などをもった標準器具をいい,一般には測定時に調節できないものをさす。ブロックゲージ,ワイヤゲージ,ねじゲージ (→限界ゲージ ) などがこの類である。 (2) 長さ,圧力,幾何学形状,ひずみなどの各物理量を測定・評価するための計器や測定器の名称。たとえば,ダイヤルゲージ,プレッシャーゲージ (圧力計) ,エアゲージ (空気マイクロメータ) ,ストレンゲージ (ひずみ計) など。 (3) 鉄道のブロードゲージ (広軌) ,ナローゲージ (狭軌) のように,標準として定められた寸法や形状そのものをさす (→軌間 ) 。単にゲージという場合は,(1) を意味することが多く,用途に応じて標準ゲージ,検査用ゲージ,工作用ゲージなどに分ける。

ゲージ
Gage, Thomas

[生]1721. サセックス
[没]1787.4.2.
イギリスの軍人,将軍。 1761年モントリオール総督。 63年北アメリカ植民地駐屯イギリス軍総司令官。 74年マサチューセッツ総督。アメリカ独立戦争開始後バンカーヒルの戦いののち総司令官更迭で本国に帰った。

ゲージ

軌間」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のゲージの言及

【編物】より

…1527年,フランスに編靴下組合が設立され,16世紀後半になると,ドイツやイギリスでも絹の編靴下が貴族に用いられた。88年,イギリスの牧師リーWilliam Leeがヒゲ針を用いた靴下編機を発明し,翌年にはさらに1インチ20ゲージ(後述)のフルファッション(成型編)絹靴下編機に発展した。1775年にクランがトリコットの母体である経編(たてあみ)機を案出,1849年にはM.タウンゼンドが,今日でもメリヤス編機のほとんどを占めているベラ針を発明し,イギリスはメリヤス王国となった。…

【端度器】より

…端面は平面,円筒面,または球面のいずれかである。ブロックゲージやマイクロメーター基準棒のような平行な平端面をもち,かつ断面が長方形,または円形の平行端度器,測定面が完全な円筒形の円板ゲージや円筒形プラグゲージ,測定面が円筒の一部からなる円筒端バーゲージや平プラグゲージ,球の測定面をもち断面が円形の球面棒ゲージなどがある。これらを単にゲージともいう。…

※「ゲージ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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