西宮記(さいぐうき)(読み)さいぐうき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西宮記(さいぐうき)」の意味・わかりやすい解説

西宮記(さいぐうき)
さいぐうき

「さいきゅうき」「せいきゅうき」ともいう。源高明(たかあきら)(914―982)著。年中恒例の公事(くじ)および臨時の儀式作法を解説した有職故実(ゆうそくこじつ)書。儀式書には、平安時代初期に『内裏式(だいりしき)』や弘仁(こうにん)、貞観(じょうがん)、延喜(えんぎ)3代の『儀式』など官撰(かんせん)のものがあったが、10世紀中ごろからの時勢変遷により、儀式作法にも変化が生じ、既成の官撰書では現実に対応できなくなったために編纂(へんさん)された。したがって私撰ながら後世長く重んじられた。それゆえ写本も多いが、巻数は一定せず、平安時代末に四巻本、五巻本がみえ、あるいは十五巻本が最良といわれたが、江戸時代には二十六巻本などもみえる。これは、1巻を上下に分けたり、系統を異にするものをあわせたり、他書をも加えているためである。また書名も、著者の邸宅名の西宮にちなんで後人がつけたもので、『西宮日記』『西宮抄』ともよばれており、本書はまだ考究すべき点が多い。

[今江廣道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例