若布・和布・稚和布(読み)わかめ

精選版 日本国語大辞典 「若布・和布・稚和布」の意味・読み・例文・類語

わか‐め【若布・和布・稚和布】

[1] 〘名〙 褐藻類コンブ科の海藻。北海道南部から九州の沿岸の干潮線下五メートルほどの海底に生える。近年では養殖も盛んに行なわれている。葉状体卵形で不規則に羽状に深裂、全長一メートル、幅五〇センチメートルに達する。茎状部の左右に翼状の和布(めかぶ)があり胞子嚢(ほうしのう)を生ずる。生食するほか、乾燥させて食用とする。めのは。にきめ。めき。《季・春》
万葉(8C後)一四・三五六三「比多潟の磯の和可米(ワカメ)の立ち乱え我をか待つなも昨夜(きそ)も今夜も」
[2] (若和布) 狂言。和泉流。住持に酒のさかなにする若布を買ってこいと言われた新発意(しんぼち)が、詐欺師にだまされて若い女を買って帰り、住持に叱られる。二人は夫婦になる約束をし、本堂へ行って杯をかわし謡い舞ううち、騒ぎを聞きつけてやってきた住持に追い出される。
[語誌]海藻の総称である「メ」に、新生であることを表わす「ワカ」という美称を冠したもので、古くは特定の海藻を指す名称ではなかった可能性もある。中世になって、現在のように特定の海藻の名称として、辞書に載せられるに至ったと考えられる。節用集諸本や「温故知新書」等に「和布」の訓として、また「運歩色葉集」等に「若和布」の訓として見え、「日葡辞書」にも「Vacame(ワカメ)」とある。

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