航空安全情報自発報告制度(読み)こうくうあんぜんじょうほうじはつほうこくせいど

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

航空安全情報自発報告制度
こうくうあんぜんじょうほうじはつほうこくせいど

航空の安全性を高めるため、航空活動に携わる個人や航空関係事業者が、安全に関する情報を自発的に報告する制度。2014年度(平成26)から開始された国土交通省航空局の航空安全プログラムに伴い始まった制度で、2014年7月に創設された。英語名称はVoluntary Information Contributory to Enhancement of the Safetyで、略称VOICES(ボイシーズ)。航空活動に従事するなかで感覚的に危険性を感じたことのある、ヒヤリ・ハット経験の情報を収集・分析し、航空事業の関係者間で共有することで、事故の予防的対策に役だてることが目的である。報告者は航空活動に従事する人や所属組織などで、自ら経験・視認した不安全事象を、電子メール、ファクシミリ、電話、航空安全情報報告サイトなどから報告することができる。また、報告者に不利益が及ばないようにするため、情報は秘匿化し、情報収集や分析作業などは一環して公益財団法人航空輸送技術研究センター(ATEC:Association of Air Transport Engineering & Research)が第三者機関として行っている。報告内容はリスク評価などが行われた後、「管制運航(大型機)」、「管制・運航(小型機)」、「空港客室・航空機」の3分野のワーキンググループで分析され、年2回程度開催される自発報告制度分析委員会でまとめられる。最終的には、航空活動事業者への注意喚起や改善提案、報告者への結果報告、航空局への提言などが行われる。

 航空の安全に関する報告制度としては、事故およびインシデントなどに関し、法令で定められた事業者から国へ届け出る義務的な報告制度はあったが、航空活動にかかわっている人たちから自発的に広く、改善や安全向上につながる事象などの情報を収集する制度がなかったことから創設された。

[編集部]

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