脊髄横断障害(読み)せきずいおうだんしょうがい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「脊髄横断障害」の意味・わかりやすい解説

脊髄横断障害
せきずいおうだんしょうがい

脊髄があるレベルに限局して障害された状態である。完全な横断性障害では障害のある脊髄レベル以下の感覚がまったくなくなり、尿や大便失禁がみられる。さらに、頸髄(けいずい)レベルでの障害では両側上・下肢、胸髄以下の障害では両下肢が麻痺(まひ)する。横断性障害が不完全であれば、脊髄横断面のどの部位が障害されるかによって種々の特徴的な症状が現れる。たとえば脊髄の半分が障害されると、同側半身の触覚、深部感覚(位置・振動覚)、反対側半身の痛・温度覚が病巣部以下で鈍くなる。この際、運動麻痺が下肢または上・下肢にみられる(脊髄半側切断症候群)。また脊髄の前方が主として侵されれば、病巣レベル以下の感覚が痛・温度覚のみ障害され、両側の下肢または上・下肢が麻痺する(前脊髄動脈症候群)。さらに頸髄や上部胸髄のレベルで脊髄の中心部が障害されると、上肢や胸上部の痛・温度覚が鈍くなり、上肢の筋肉が萎縮(いしゅく)して筋力が低下する。

 このような脊髄の横断障害は、多発性硬化症外傷腫瘍(しゅよう)、血行障害、脊髄空洞症など脊髄内の病気ばかりでなく、脊髄外の腫瘍や変形性頸椎(けいつい)症などによる脊髄の外からの圧迫によっても引き起こされる。

[海老原進一郎]

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