胃内異物(読み)いないいぶつ(英語表記)Foreign body in the stomach

六訂版 家庭医学大全科 「胃内異物」の解説

胃内異物
いないいぶつ
Foreign body in the stomach
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 胃内異物とは、ある異物を誤飲(ごいん)し、食道で各生理的狭窄(きょうさく)部を通過して、胃内に異物が到達し停滞している病態、もしくは胃石や食物塊のように誤飲誘因とせず、胃内に異物が停留している病態です。

 前者は、小さい子ども以外は、自分が何をいつ誤って飲み込んだか自覚していることが多く診断は容易です。一方、小さい子どもの場合は、子ども自身の自覚に乏しく、診断が難しいことがあります。いずれにしても詳しく医師に説明することが重要です。

原因は何か

 胃内異物の種類としては、PTP包装(薬剤の包装部分)、貨幣、おもちゃ、義歯(ぎし)、胃石、食物塊などがあります。子どもではPTP包装、貨幣、おもちゃなどが多くみられ、お年寄りでは義歯、胃石が多い傾向にあります。

症状の現れ方

 胃内に異物が存在しているだけでは症状は認められません。しかし、胃幽門輪(ゆうもんりん)(出口)を通過し、小腸大腸の生理的狭窄部に穴をあけて通り抜け、腹膜炎(ふくまくえん)を来すことがあり、この際は、腹膜炎症状として、腹痛腹部圧痛、吐き気、下痢、腹膜刺激症状などがみられます。また、胃幽門部を通過しにくい胃内異物(大きい胃石、細くて長い(はし)鉛筆など)は胃内に停留することで、胃部膨満感(ぼうまんかん)一過性の吐き気・嘔吐、腹部違和感などの症状がみられることもあります。

検査と診断

 詳細な状況把握により、誤飲物の種類、大きさ、誤飲した時間などを知り、さらに誤飲物の位置確認のために腹部単純X線検査を行います。腹痛や腹膜刺激症状など腹部の強い炎症所見を認めた際には、誤飲物による消化管穿孔(せんこう)を疑います。単純X線検査では異物が不明な時や腹膜炎が疑われる場合は、腹部CT検査による評価が有用です。胃内異物が強く疑われる場合には、即座に上部消化管内視鏡検査を行うこともあります。

治療の方法

 治療はもっぱら内視鏡的異物摘出術が望まれます。異物の形状が安全な物(小さく、とがっていない)であれば、経過観察を行い、糞便とともに体外に排出されるのを待つこともあります。異物の形状が内視鏡では摘出困難な時は、腹腔鏡下手術または開腹手術が行われます。

病気に気づいたらどうする

 小さい子どもの誤飲が疑われる場合、胃内にまで到達する前に咽頭食道部(いんとうしょくどうぶ)(のどもと)に異物がある場合もあり、吐き出すように促してみます。しかし多くは、胃内まですみやかに落下してしまうため、内視鏡下での異物摘出術を行う必要があります。本疾患に気づいた時には、とくに異物の形状が消化管穿孔や狭窄を来す危険性のある場合、消化器専門医をすみやかに受診し、確定診断および的確な治療選択をしてもらいましょう。

才川 義朗, 吉田 昌, 北島 政樹

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胃内異物」の意味・わかりやすい解説

胃内異物
いないいぶつ
foreign bodies in the stomach

飲食物や薬剤以外の物で,胃内に入った物。多くは小児や精神病患者などが,誤ってまたは故意に飲み込んだ物で,コイン,釘,ガラス玉,スプーンなどさまざま。回虫や胆石を含めていう場合もある。診断はX線検査や胃鏡で行う。大きい異物やとがった物などは内視鏡を利用したり,手術で除去する。

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