綿・棉・草綿・絮(読み)わた

精選版 日本国語大辞典 「綿・棉・草綿・絮」の意味・読み・例文・類語

わた【綿・棉・草綿・絮】

〘名〙
真綿木綿(もめん)などの総称。衣類、布団などに用いる。古くは蚕(かいこ)から製する真綿(絹綿)を用いたが、戦国時代から江戸時代にかけて植物のワタから製する木綿綿(木綿)が普及した。現代では、化学繊維から製するものもある。《季・冬》
万葉(8C後)三・三三六「しらぬひ筑紫の綿(わた)は身に着けていまだは着ねど暖けく見ゆ」
平家(13C前)三「砂金一千両、富士の綿二千両、法皇へ進上ぜらる」
② アオイ科ワタ属の植物の総称。熱帯を中心に四〇種くらいある。草本または木本。高さ〇・六~一メートル。葉は互生し、葉身は掌状に三~九裂する。花は白、黄また紫色の五弁花で、葉腋につく。花後、苞に包まれた卵形の果実を結ぶ。果実は熟すと三~五裂して楕円形の黒い種子を露出。種子をおおう黄褐色の長毛を紡績用にする。また種子から綿実油をとる。繊維植物として古代から世界中に栽培され、リクチメン・アジアワタ(メン)・カイトウメン・エジプトメンなどがある。日本には平安初期にアジアワタが伝わったことがあるがすぐ絶え、戦国時代から江戸時代に一般に栽培されるようになった。明治時代に日本で栽培されたワタはリクチメンである。漢名に草綿をあてる。
▼わたの花《季・夏》
※日本後紀‐延暦一八年(799)七月是月「有一人小船、漂着参河国、〈略〉大唐人等見之、僉曰、崑崙人〈略〉閲其資物、有草実、謂之綿種
③ (絮) 植物の種子についている細い糸のような毛。①に似ていることからいう。風に乗って飛び、種子を運ぶ。
※和漢三才図会(1712)八三「柳〈略〉蕊落而絮(ワタ)出如白絨(けをり)風而飛」
④ 柔らかいこと、また、心や人あたりの柔らかい人のたとえ。
※浮世草子・風流曲三味線(1706)四「お侍様は屹とした様で、然も御心が綿(ワタ)で、馴染(なじみ)ます程心が打解け」
⑤ 疲労した様子をたとえていう。→綿(わた)のよう
浄瑠璃・浦島年代記(1722)一「口のこはい荒馬でも、一責(せめ)では乗伏せてわたにする」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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