紛・擬(読み)まがい

精選版 日本国語大辞典 「紛・擬」の意味・読み・例文・類語

まがい まがひ【紛・擬】

〘名〙 (動詞「まがう(紛)」の連用形の名詞化)
① 入り乱れること。まざって区別のつかないこと。
万葉(8C後)一五・三七〇〇「あしひきの山下光るもみち葉の散りの麻河比(マガヒ)は今日にもあるかも」
② あやまち。過失。まちがい。つまずき。
※延喜式(927)祝詞「襁(たすき)懸くる伴の緒を、手の躓・足の躓〈古語に麻我比といふ〉なさしめずして」
③ 見違えるほどよく似せてあること。また、そのもの。贋物。まがいもの。
※俳諧・犬子集(1633)二「柳にやさかでまがひの糸ざくら〈慶友〉」
④ 古相撲の手のうち、四十八手以外のもの。鴨入首(かものいれくび)・向附(むこうづき)・逆附(さかづき)・鴫羽返(しぎのはがえし)・衣被(きぬかずき)・悔(とうぼうがえし)水車(みずぐるま)大意(つみのおおごころ)・繋前後(かけのまえうしろ)・磯並枕(いそのなみまくら)・たちがん・居眼(いがん)・猿一飛(さるのひととび)・夢枕(ゆめのまくら)の称。
※古今相撲大全(1763)下末「十二之紛(マガヒ)

まが・う まがふ【紛・擬】

[1] 〘自ハ四〙
① 分けることができないほどに入りまじる。まじりあって区別がしにくい。
※万葉(8C後)五・八四四「妹が家(へ)に雪かも降ると見るまでにここだも麻我不(マガフ)梅の花かも」
② よく似ていてまちがう。見分けたり、聞き分けたりできないほどよく似ている。似通う。
源氏(1001‐14頃)須磨「恋わびてなく音にまがふ浦浪はおもふかたより風やふくらん」
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒まがえる(紛)
[語誌]語源としては「ま(目)」+「かふ(交)」が妥当か。「目がちらちらするほどに入り乱れ、また散り乱れる」が原義と考えられる。上代では、「みだる」は女性の髪などがもつれる場合などに、「まがふ」は雪や花びらなどが入り乱れる場合に用いられることが多い。

まが・える まがへる【紛・擬】

〘他ハ下一〙 まが・ふ 〘他ハ下二〙
① 入りまぜて区別しにくくする。入り乱れさせる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇「天は名華及妙香末を雨りて繽紛(マガヘ)乱へ墜して」
※源氏(1001‐14頃)花宴「世にしらぬ心地こそすれ有明の月のゆくへをそらにまがへて」
② まちがえさせる。
※万葉(8C後)八・一六四〇「吾が岡に盛りに咲ける梅の花残れる雪を乱(まがへ)つるかも」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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