筋・条(読み)すじ

精選版 日本国語大辞典 「筋・条」の意味・読み・例文・類語

すじ すぢ【筋・条】

[1] 〘名〙
① 体の筋肉を作っている繊維質のもの。また、筋肉。筋肉と骨とを結ぶ腱(けん)のようなものについていうこともある。
古事記(712)下「皆其の族の膝の筋(すぢ)を断ちたまひき」
太平記(14C後)三八「嗷問(がうもん)度重て、骨砕け筋断えぬと見えける時に」
血管。特に皮膚の表面に浮き上がって見えるものにいうことが多い。〔観智院本名義抄(1241)〕
※家鴨飼(1908)〈真山青果〉九「力を籠める度毎に肩の肉がムクムクと動いて、頸筋に太い静脉(スヂ)が浮いた」
③ 植物などに含まれる繊維質のもの。
※応永本論語抄(1420)為政第二「蚕の桑をくふは、やわらかなる処ばかりを食て、葉の筋をば不食して残す也」
④ 細長い一つづきのもの。線状、糸状のもの。
(イ) 髪の毛。毛すじ。
古今(905‐914)雑上・九二八「おちたぎつたきのみなかみ年つもり老いにけらしなくろきすぢなし〈壬生忠岑〉」
(ロ) 細長くつづいている線。
※源氏(1001‐14頃)鈴虫「罫(け)かけたる金(かね)のすぢよりも墨つきのうへにかがやく様などもいとなむ珍かなりける」
(ハ) 物の表面に細く表われている、また刻まれている文(あや)。手の紋や顔の皺(しわ)
※両足院本山谷抄(1500頃)四「手のすぢの見へぬほどは夜の中ぞ」
(ニ) 織物などにはいっている、たてのしま。たてじまの模様。
(ホ) 衣類、器具などに金銀などで入れた細長い飾り。
※栄花(1028‐92頃)煙の後「女房の装束例の心々にいどみたり。すぢ置き、鶴亀松竹など、心々にしつくしたり」
⑤ 一つづきの関係でつながっているもの。
(イ) 血統血筋。家系。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「すぢ変りたるやうにの給はすれど、兼雅が後は大人も童も、子孫まで、皆御中にし侍れば」
愚管抄(1220)六「公経の大納言は〈略〉中納言左衛門督通季のすぢ也」
(ロ) 芸事などで、その家、血筋などを受け継いでいる素質。あるいは血筋などに関係なく、単に素質。
※半七捕物帳(1923)〈岡本綺堂〉少年少女の死「踊の筋(スヂ)も悪くないのと、その親許が金持なのとで」
(ハ) 身分。地位。
※源氏(1001‐14頃)澪標「かしこきすぢにもなるべき人の、あやしき世界にて生れたらむは」
(ニ) 流儀流派
※今鏡(1170)五「佐理の兵部卿の真のやうをぞ好みて書き給ふとぞ聞ゆる。かつは法性寺の大臣の御すぢなるべし」
⑥ 物事の前後、あるいは全体が、論理的な関係などでつながっているもの。すじみち。
(イ) 道理。ことわり。わけがら。いわれ。
※源氏(1001‐14頃)常夏「深きすぢ思ひ得ぬ程のうち聞きには」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「おまへさまのが御尤な筋さ」
(ロ) 脚本・小説・物語などの話のしくみ、趣向。話の梗概(こうがい)。あらすじ。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)六「コリャ是大方筋の見へた事じゃ」
※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「其本尊たる物語に咄々奇怪の脚色(スヂ)ありなば」
⑦ おもむき。ようす。さま。
※源氏(1001‐14頃)澪標「御手すぐれてはあらねど、らうたげに、あてはかなるすぢに見ゆ」
※栄花(1028‐92頃)鳥辺野「御屏風の哥ども、上手ども仕うまつれり。多かれど、同じすぢの事は書かず」
⑧ それに関する方面。その方面の場所、事柄、人。具体的にそれと名をあげて指示することをさけ、ぼかして表現する用い方。
※後撰(951‐953頃)春中・六七「青柳のいとつれなくもなりゆくかいかなるすぢに思ひよらまし〈藤原師尹〉」
※社会百面相(1902)〈内田魯庵増税「拙者は確かな筋から聞込んでおる」
⑨ 一つづきに続いている道路などについていう。また、その方向、方面についていう。
(イ) 方角。方向。
※源氏(1001‐14頃)帚木「二条院にも同じすぢにて、いづくにかたがへん」
(ロ) 道路や街道などの道すじ。その方面。そのあたり。
※一言芳談(1297‐1350頃)上「西へゆくすぢ一だにたがはずば」
(ハ) 通り。道。
※俳諧・春の日(1686)「暁いかに車ゆくすじ〈荷兮〉 鱈負ふて大津の浜に入にけり〈旦藁〉」
(ニ) 田のあぜ道。また、田のうね。
⑩ 江戸時代、山や川によって区分された一行政区画。甲斐国の九筋、彦根藩領の三筋など。
⑪ 兜(かぶと)の鉢を構成する竪矧(たてはぎ)の鉄板の外縁を折返した部分をいう。
⑫ 和船の垣立(かきたつ)の構成材。垂直に立てる柱(立(たつ))に対して、横に長く通す材。構成場所により大筋(玉縁ともいう)・上筋・五枚筋・番筋(つがいすじ)・貫筋(ぬきすじ)などの種類がある。〔和漢船用集(1766)〕
※歌舞伎・黄門記童幼講釈(1877)七幕「砂鉢に沙魚と筋(スヂ)の煮こごりのあるを持って来て」
※洒落本・箱まくら(1822)中「『あの子も北方のくせに、やみちうじゃな』『アアすぢじゃわへ』」
⑮ 背に黄色いすじのある鰻(うなぎ)。すじうなぎ。〔洒落本・通言総籬(1787)〕
⑯ 取引で、会社の内情などをよく知って売買する事情通の人。〔現代大辞典(1922)〕
⑰ 囲碁・将棋で、ある局面または部分に最も適した手。手筋。
⑱ 囲碁で、相手の石に対する急所。
⑲ マージャンで、「一・四・七」「二・五・八」「三・六・九」などの、一定間隔の数の並び、またその牌。
[2] 〘接尾〙
① 川、帯、線、道など細長く続いているものを数えるのに用いる。
※書紀(720)推古三一年七月(図書寮本訓)「仍て仏の像一具、〈略〉小幡十二条(スチ)を貢る」
※竹取(9C末‐10C初)「其の竹の中に、もと光る竹なん一すちありけり」
② 江戸時代、銭(ぜに)一〇〇文を数えるのに用いる。銭さし一筋の意で、銭五〇文のときは半筋という。
※狂歌・狂言鶯蛙集(1785)一六「白浪の名にはたたねど断りもなくて二すぢあしのかりどり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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