神宅院(読み)しんたくいん

日本歴史地名大系 「神宅院」の解説

神宅院
しんたくいん

名草郡四院の一。日前ひのくま国懸くにかかす両社の神主職(紀国造家)を院司として、一一世紀に国衙によって組織された行政単位。日前神戸六一戸、国懸神戸六五戸(大同元年牒「新抄格勅符抄」所引)の神戸一二六戸を基礎とし、両社による開発私領化が進行した一種の神領的な地域であった。

大治二年(一一二七)八月一七日の紀伊国在庁官人等解案(林家文書)に「神宅院郡司介 紀在判」とみえる。同解案によると、両社の封は一二一烟あったが、年来未進が続き神事支障をきたすようになった。傍例によると、神社仏寺の封は公田をもって便補されるのが通例となっているから、日前・国懸両社も岡前おかざき村内二四町、和太わだ南村内三〇町、安原やすはら村内一五町、岡田おかだ下村内一〇町、合計七九町の常荒田を便補してほしいと申請した。これらの地は塩入地で年来開作が不能の荒野であって、塩洲を防ぐために単功数千万に及ぶ四〇余町の築堤工事を実施して開発することを前提に、両社領として立券を承認された。

これら常荒田の四至は、東は「安原牟礼岡并朝日寺東谷」で、現和歌山市安原地区の南の小高い山と、同地区内朝日あさひ辺りに比定でき、安原村一五町はこの西側平地に広がった地と思われる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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