礒部郷(読み)いそべごう

日本歴史地名大系 「礒部郷」の解説

礒部郷
いそべごう

和名抄」高山寺本は訓を欠き、東急本は「伊曾部」と訓を付す。現安中市の磯部いそべおよび上・下・東上・西上磯部を遺名とみる。神亀三年(七二六)金井沢かないざわ(国指定特別史跡、現高崎市)には鍛師磯部君身麻呂・物部君午足らの名が刻まれており、同族仏教に入信したことを表明している。「続日本紀」天平神護元年(七六五)一一月一日条に「甘楽郡人中衛物部蜷淵等五人賜姓物部公」とあり、翌二年五月二〇日条には「甘楽郡人外大初位下礒部牛麻呂等四人賜姓物部公」とある。

礒部郷
いそべごう

「和名抄」高山寺本に「礒部」と記し「以曾ヘ」と訓じ、流布本では「磯部」と記し「伊曾倍」と訓じている。「いそべ」と称していたことは明らかである。

「日本地理志料」は、磯部いそべ戸倉とぐら福井ふくい徳間とくま内川うちかわ(いずれも現埴科郡戸倉町)をその地域とし、「大日本地名辞書」は、今の戸倉村(現戸倉町戸倉地区)がこれであると記す。「更級埴科地方誌」も同様の見解である。現戸倉町の戸倉地区は、もと上戸倉村・福井村・下戸倉村の三ヵ村であったのが、明治七年(一八七四)上戸倉村と福井村が合併して、磯部村となった。

礒部郷
いそべごう

「和名抄」所載の郷で、同書高山寺本・名博本に礒とみえ、東急本では「礒」、元和古活字本では「礒々」とする。古代郷に二字の例はなくもないが、高山寺本などは々の字が脱落、そして々は部の略字の誤記とみなすことが可能である。諸本とも訓を欠くが、磯部とすればイソヘであり、現成田市磯部いそべを遺称地とみることができる。磯部は延暦二四年(八〇五)不要として廃された東海道の香取郡荒海あらみ(「日本後紀」同年一〇月二五日条)の比定地である同市荒見あらみのすぐ北にある。

礒部郷
いそべごう

「和名抄」高山寺本・東急本とも訓を欠く。天平神護二年(七六六)一〇月二一日付越前国司解(東南院文書)に郷名がみえる。諸国御料所方御支証目録(内閣文庫蔵)に「越前国磯部郷」とみえるのが、当郷の後身と思われ、中世には室町幕府の御料所になったらしい。

礒部郷
いそべごう

「和名抄」所載の郷。同書東急本に「以曾倍」の訓がある。郷域は円山まるやま川の支流磯部いそべ川流域を主とし、同じく円山川の支流の与布土ようど川・粟鹿あわが川の下流域も含むとされる。現山東さんとう町の北部にあたる。「新撰姓氏録」河内国皇別に仲哀天皇の皇子誉屋別命を祖とする磯部臣がみえ、「古事記」応神天皇段に「伊勢部」を定めたとある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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