着到(読み)チャクトウ

デジタル大辞泉 「着到」の意味・読み・例文・類語

ちゃく‐とう〔‐タウ〕【着到】

[名](スル)
目的地に行き着くこと。到着
「引きもきらずに御―なされますので」〈谷崎・盲目物語〉
歌舞伎で、開幕30分前ころに、能管太鼓大太鼓で演奏する儀礼囃子ぎれいばやし。元来は座頭ざがしらの俳優の楽屋入りを知らせる合図だったという。
着到状」の略。
着到和歌」の略。
出勤した役人氏名を記入した帳簿
日給御簡みふだ―など見て」〈弁内侍日記
集会などに出席・参加すること。
「今宵の―誰々なるぞ」〈読・弓張月・残〉

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精選版 日本国語大辞典 「着到」の意味・読み・例文・類語

ちゃく‐とう ‥タウ【着到】

〘名〙
① (━する) 目的の場所にいたりつくこと。急いでやってきてつくこと。到着。
※延喜式(927)一九「五位以上就版且命職掌。六位以下著到於省掌所。史生且依著到。分配職掌
② 公武の政庁で、諸番宿直に出勤した者が氏名を記入する帳簿。出勤簿。
※小右記‐永延二年(988)八月一八日「又、滝口着到、出納検臨、可封之由有定仰
寺院法会・集会に出仕した僧名を記した文書。
大乗院寺社雑事記‐文正元年(1466)一二月四日「古今著到数百帖」
平家(13C前)二「小松殿には、盛国承て着到つけけり」
浄瑠璃・国性爺合戦(1715)九仙山「軍勢の着到一巻取り出し」
吾妻鏡‐文治五年(1189)七月二八日「仰御家人等面々、被手勢、仍各進其着到
中世出陣の時、馳せ参じた武将に対して主家の側から武将とその手勢が負担すべき人数・武具などを明細に記して申し渡す書付。
※豊島・宮城文書‐元亀三年(1572)正月九日・北条氏印判状「改定着到之事〈略〉右着到、分国中何も等申付候間、自今以後、此書出之処、聊も不相違候」
明月記‐建仁元年(1201)八月五日「頭中将新兵衛佐等、於和歌所著到之由相議事」
⑧ (━する) 集会などに参加すること。
※浄瑠璃・佐藤忠信廿日正月(1710頃)中「されども七十有余の老僧は、かへって足手まとひやと愚僧はちゃくたうを許されしが」
⑨ (━する) 歌舞伎役者などが劇場の楽屋にはいること。
⑩ 歌舞伎で、毎日開演前に、座頭の俳優の楽屋入りを合図に、能管・太鼓・大太鼓で打ちこむ囃子。着到しゃぎり。
※腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉一六「駒代は楽屋で着到の大太鼓が鳴る時分」
[語誌]本来、文字通り①の意を表わしていたものが、院政期頃から、主として②を指すようになり、③④⑤もこれに類するものであるが、さらに⑥の意味をも表わすようになった。②と⑥との意味上の共通点は、「日頃の契約にしたがって参じたことを証明する帳簿」という点にある。この結果、「到着」の語が、代わって①の意味を担うようになったと思われる。

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世界大百科事典(旧版)内の着到の言及

【歌舞伎】より

…〈柝〉は,幕明き,幕切れ,道具替りのきっかけなどを知らせる合図である。同時に,俳優の楽屋入りを告げる〈着到(ちやくとう)〉や,楽屋内に開幕を知らせる〈二丁〉,道具の転換をつなぐ〈ツナギ〉などには定まった打ち方をする。〈柝〉は,観客,俳優その他すべての劇場関係者に対する進行状況の告示を本来の役割とするものである。…

※「着到」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」