日本大百科全書(ニッポニカ) 「相(鉱物)」の意味・わかりやすい解説
相(鉱物)
そう
固体であれば結晶学的および化学的に均質で一定の物理的状態にあると規定できる物質。液体、気体であれば、化学的に均質で一定の物理的状態にあると規定できる物質。「方解石相当相」という場合、方解石と同じ化学組成と原子配列をもった人工のCa[CO3]をさす。鉱物学・結晶学・結晶化学などの領域では、近似的には「化合物」あるいは単に「物質」と読みかえてもよい。「高温相」のような場合は「高温条件下安定化合物」と読みかえてもよいが、「高温変態」とすればいっそうはっきりする。「β(ベータ)相関係相」のような場合は、「(ある物質の)β型変態に関係した物質」というような表現を使えば理解しやすい。厳密な意味では、結晶表面と内部とでは物理化学的な状態が異なるが、物質としては連続しているので、表面・内部を含めて単一相として扱われる。ただし、固体がきわめて微細な状態になって気体中に分散し、一種の混合物質として、微細でないときにはみられないような挙動をとる場合は、「流体相」や「固体相」と区別するため「粉体相」という合成語が用いられることがある。
[加藤 昭]
『秋月瑞彦著『鉱物学概論――形態と組織』(1998・裳華房)』▽『石井菊次郎著『物質構造の基礎』(1998・共立出版)』