疝気(読み)せんき

精選版 日本国語大辞典 「疝気」の意味・読み・例文・類語

せん‐き【疝気】

〘名〙 漢方で疝は痛の意で、主として下腹痛をいう。疝病。疝気病。あたばら。せん。
※大山寺本曾我物語(南北朝頃)一「居易がせんき思ひ出でられたり」
浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「此方は腰をお引きなさるるが疝気でも起ったか」 〔史記‐倉公伝〕
[補注]下腹部一帯の痛みを広く指すため、諸症状に適用され、俗間で男性特有の陰嚢睾丸の病とされた。患部が特定できないため「疝気の虫」のせいにされたりもした。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「疝気」の意味・わかりやすい解説

疝気
せんき

腹の痛む病気で、おもに下腹痛をさす。巣元方(そうげんほう)の『病源候論』に「疝は痛なり」とある。現在の仙(疝)痛に相当するものとみられる。

[編集部]

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百科事典マイペディア 「疝気」の意味・わかりやすい解説

疝気【せんき】

漢方用語。疝とも。大腸小腸生殖器など下腹部内臓の痛む病気。石疝,血疝,陰疝,妬疝,気疝などに分類されるが定説はない。一般にはよこね,脱腸なども含めることがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「疝気」の意味・わかりやすい解説

疝気
せんき

漢方用語。下腹部の痛みの総称胃炎胆嚢炎あるいは胆石腸炎腰痛などが原因となることが多い。

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デジタル大辞泉 「疝気」の意味・読み・例文・類語

せん‐き【×疝気】

漢方で、下腹部や睾丸こうがんがはれて痛む病気の総称。疝病。疝。

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世界大百科事典 第2版 「疝気」の意味・わかりやすい解説

せんき【疝気】

近代以前の日本の病名で,当時の医学水準でははっきり診別できないまま,疼痛をともなう内科疾患が,一つの症候群のように一括されて呼ばれていた俗称の一つ。単に〈疝〉とも,また〈あたはら〉ともいわれ,平安時代の《医心方》には,〈疝ハ痛ナリ,或ハ小腹痛ミテ大小便ヲ得ズ,或ハ手足厥冷シテ臍ヲ繞(めぐ)リテ痛ミテ白汗出デ,或ハ冷気逆上シテ心腹ヲ槍(つ)キ,心痛又ハ撃急シテ腸痛セシム〉とある。江戸時代の《譚海》には,大便のとき出てくる白い細長い虫が〈せんきの虫〉である,と述べられているが,これによると疝気には寄生虫病があった。

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普及版 字通 「疝気」の読み・字形・画数・意味

【疝気】せんき

はらいた。

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世界大百科事典内の疝気の言及

【寄生虫】より

…当時は野菜や食器・手などを十分に洗浄するような衛生観念もなく,また漬物を多食していたことも災いした。 江戸時代には寄生虫病は〈あだはら〉とも呼ばれ,疝気(せんき)という内科疾患には寄生虫病が多かった。江戸末期の《新撰病双紙》には,蟯虫病に悩む娘と,生のマスを食べてコウセツレットウジョウチュウ(広節裂頭条虫)が肛門から出ている男の姿が描かれている。…

※「疝気」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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