番匠(読み)バンジョウ

デジタル大辞泉 「番匠」の意味・読み・例文・類語

ばん‐じょう〔‐ジヤウ〕【番匠】

《「ばんしょう」とも》
古代大和飛騨などの国から交代朝廷に仕え、木工寮もくりょうに属して宮廷建築に従事した職人
木造建物をつくる職人。大工

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精選版 日本国語大辞典 「番匠」の意味・読み・例文・類語

ばん‐じょう ‥ジャウ【番匠】

〘名〙
① (番上の工匠の意) 古代、諸国から交替で京に上り、木工寮に属して営繕に従事した大工。
正倉院文書‐天平六年(734)尾張国正税帳「番匠壱拾捌人」
② 転じて、一般の大工の称。
※中右記‐長治二年(1105)六月二六日「行向中御門亭。令北対、并渡殿、侍廊、車宿屋、門等、合十宇棟。聊給饗祿於番匠了」
太平記(14C後)七「京都より番匠(バンシャウ)を五百余人召下し」

ばん‐ぞう ‥ザウ【番匠】

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「番匠」の意味・わかりやすい解説

番匠
ばんしょう

中世の建築工匠。古代の木工(こだくみ)、近世の大工(だいく)にあたる。奈良時代に官営工房に勤務する工匠や雑役労働力を上番匠丁(じょうばんしょうちょう)と称したことに由来するが、古代の番匠は多様な分野の工匠の総称であり、1265年(文永2)の『若狭(わかさ)国惣田数(そうでんすう)帳』にみえる番匠が、木工に限定されるようになった早い用例である。番匠集団は大工(だいこう)、引頭(いんとう)、長(おさ)、連(つれ)の四階層によって作業組織を編成したため、指揮工を意味する大工の語も、中世から番匠の同義語として併用されており、近世には番匠にかわって大工が建築工匠の一般的な呼称となった。

浅香年木

『大河直躬著『番匠』(『ものと人間の文化史5』所収・1971・法政大学出版局)』


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「番匠」の解説

番匠
ばんしょう

「ばんじょう」とも。中世の木造建築技術者。もとは番上(ばんじょう)の木工(もく)に由来するらしい。中世初期には,ほとんどが修理職(しゅりしき)・木工寮(もくりょう)や南都の大寺院,地方の国衙国分寺に属した。やがて無所属の散在工もふえて受注競争が激化した結果,各寺社ごとに大工職(だいくしき)(工事の独占請負権)が成立した。16世紀には,いくつかの都市で十六人番匠などという有力番匠の独占的連合も結成された。「春日権現験記(かすがごんげんげんき)」などの絵巻が番匠の作業風景を活写している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「番匠」の意味・わかりやすい解説

番匠
ばんしょう
fan-jiang; fan-chiang

中国,唐代,中央官庁で使役される工匠をいう。番は交代勤務を意味する。『新唐書』百官志によると,少府監 (宮廷,官庁用器物製作所) に短番匠 5029人,将作監 (国営土木建築庁) に短番匠1万 2744人がいたと伝える。これら官に使われる工匠は,州県の農民から強壮で技能のある者を選定し,毎年一定期間を定めて首都などへ上番勤務させた。明代の輪班匠も同様な性質のもの。

番匠
ばんしょう

大工の古名。律令制時代,朝廷に交替で勤務していた飛騨工 (ひだのたくみ) を番匠といったが,鎌倉~室町時代になって,おもに建築職人をさすようになり,番匠大工とも呼ばれた。彼らは京都,奈良,鎌倉などの都市に居住し,大社寺に所属して座を組む者が多かった。江戸時代以降,一般に大工をさすようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の番匠の言及

【大工】より

… 平安時代から中世にかけて〈大工〉の意味はしだいに変化する。たとえば1208年(承元2)の興福寺北円堂造営では,番匠(ばんじよう)大工2人・引頭(いんどう)8人・長(おさ)20人・連(むらじ)11人,瓦葺き大工2人・引頭2人,瓦造大工1人,鍛冶長2人,鋳物師大工1人が参加しており,大工は番匠,瓦葺き,瓦造,鋳物師の統率者としての役名あるいは肩書となっている。構成は律令期の大工,少工,長上工,番上工とちがって大工,引頭,長,連となっており,大工はそれぞれの職種ごとにその長を示している。…

※「番匠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」