甲州金(読み)コウシュウキン

デジタル大辞泉 「甲州金」の意味・読み・例文・類語

こうしゅう‐きん〔カフシウ‐〕【甲州金】

甲斐国鋳造され、甲斐一国に限って通用した金貨戦国時代武田氏が鋳造し、江戸末期まで流通した。甲金

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精選版 日本国語大辞典 「甲州金」の意味・読み・例文・類語

こうしゅう‐きん カフシウ‥【甲州金】

〘名〙 甲斐国(山梨県)を領有した武田氏が自領の鉱山から産出した金を使って天文年間(一五三二‐五五)に創鋳した金貨。主として円形だが、異例として碁石形のもの、小長方形のものもある。江戸時代にも幕府直轄領として、引き続き独自の貨幣体系を持ち、文政九年(一八二六)頃まで甲州一円にだけ流通した。甲州。甲金。甲州判。〔国家金銀銭譜追加(古事類苑・泉貨五)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「甲州金」の意味・わかりやすい解説

甲州金 (こうしゅうきん)

戦国時代から江戸時代を通じて甲斐国内に通用した金貨。その始まりについては明らかにされていないが,武田信虎のころには貨幣の形態になって存在し,子信玄の治世に甲斐の産金量の増加とともに多くつくられるようになり,武田氏の統率下に松木野中志村,山下の4家が鋳造していた。はじめは主として武具の購入や賠償金,戦功の褒賞等に軍資金として用いられたようであるが,しだいに民衆の間でも使用されるようになった。武田氏滅亡後から文禄年間にかけて(1582-96)はとくに野中判が多くつくられた。1601年(慶長6)徳川家康は金銀貨幣を鋳造し,全国の幣制統一と貨幣鋳造権の掌握のため,甲州金の廃止を命じ,甲州金座も大久保長安の管下におかれた。しかし甲州の民衆の抵抗にあい甲州金の通用は認めた。13年に長安が失脚すると,松木氏のみが再び甲州金を鋳造するようになり,甲府佐渡町に江戸後藤金座の監視のもと松木金座がおかれ,以後近世を通じて松木氏が鋳造を行った。しかし小判と甲州金との両替率が金の実際含有量にあわず甲州金に不利だったこと,年貢等によって幕府に回収されたこと,増改鋳を行わなかったので不完全な通貨が出るようになったこと等により,幕末にはほとんど姿を消した。なお甲州金は大別次の5種類にわかれている。(1)古甲金(ここうきん) 元禄(1704)以前の甲州金の総称で,竹流金,判金,碁石金,太鼓判金等があり,表は無文のものが多く品位が高かった。(2)甲安金(こうやすきん) 1707年(宝永4)から14年(正徳4)に甲斐に封ぜられた柳沢吉保が,元禄小判改悪にならって改鋳したもの。(3)甲安今吹(こうやすいまふき) 1714年に吉保の子吉里が正徳小判に準じて改鋳したもの。(4)甲重金(こうしげきん) 1721年(享保6)に再び吉里が改鋳し品位をよくしたもの。(5)甲定金(こうさだきん) 柳沢氏の転封以後,金貨欠乏に対処するため27年(享保12)に吹き足したもので,甲重金と同品位といわれる。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「甲州金」の解説

甲州金
こうしゅうきん

甲金とも。室町末~江戸時代に都留郡をのぞく甲斐一国内で通用した金貨。金山開発が進んだ武田氏支配下ですでに金貨が発行されたが,江戸初期に松木氏が金座を命じられ鋳造を行った。1695年(元禄8)の元禄金銀の改鋳時に一時通用停止となったが,1707年(宝永4)から品位を下げて鋳造された。元禄以前を古甲金,改鋳後を甲安金とよぶ。11年(正徳元)にはさらに品位を下げたが,21年(享保6)から甲重金,27年から甲定金を鋳造して古甲金並の品位に引き上げた。はじめ一両金もあったが,主体は円形の一分・二朱・一朱金,矩形の朱中金(1朱の半分)などであり,量目の基準はおもに1両を4匁とする田舎目が用いられた。文政期以後幕府金貨が流入するなかで姿を消した。

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世界大百科事典(旧版)内の甲州金の言及

【一朱金】より

…一朱金の表面の色揚げがとれ,銀貨のような白みが感じられたので,俗に〈小二朱(こにしゆ)〉と呼ばれ,また〈銀台の似せ小判〉ともいわれた。天文期(1532‐55)に武田氏が甲斐国で創鋳した甲州金のなかにも,一朱金がみられた。甲州一朱金は円形であった。…

【領国貨幣】より

…領国貨幣の多くは元禄期(1688‐1704)に消滅し,幕府貨幣に統一されていったが,元禄期以後にも引き続いて鋳造された場合も見られる。領国貨幣の中で最も代表的な甲州金は戦国期の武田氏の時代に始まり,松木・野中・山下・志村の4家が甲州金の金座をつとめた。慶長期(1596‐1615)以後はそのうち松木家だけが金座の役職を命ぜられている。…

※「甲州金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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